のろい
突然、香に手を引かれ、皆から少しだけ離れたところに連れられた悠はそのあまりの唐突さにただただ『?』と頭にクエスチョンを浮かべる
「後で郁斗君の脚のことで話があるの」
「怪我の痛み、なにか心当たりがあるんですか?」
こっそりと声を潜めて耳打ちされたのは、このまつりが終わった後に郁斗と一緒に来てほしい、という内容だった
それを聞いて悠は怪我について、何か知っていたり、治す方法があるのかと期待するが、香はそれにかぶりを振って否定する
「郁斗君の足の痛みは怪我のせいじゃない。怪我はお医者さんの言った通り万全に治ってるわ」
「えっ、じゃあなんで……」
困惑する悠を見て、一瞬だけ香は考えるような素振りを見せる。恐らく、この場で伝えるか否かを判断したのだろう。ただ、それは一瞬だけで、すぐに真剣な目で悠に視線を向け
「あれは怪我じゃなくて、『呪い』よ」
思ってもいなかった。香が言うからこそ信じられる単語が口にされ、悠はその場で息を飲んだ
呪い
呪詛、とも呼ぶそれは何らかの方法によって、他者或いは自身に良くない影響を与えるまじないの総称だ。
まじない、と言う言葉自体が『呪い(マジナイ)』と呼ぶ中でも、一際悪意を持って行使される呪い
それは古の時代から現代に掛けても密かに行われる手法であり、それが効果があるにしろ、無いにしろ、気取られることなく、何らかの悪影響を及ぼすそれは、決して褒められたものではない、というのは間違いない
「……な、なんで郁斗がそんな、呪いなんか」
「分からないわ。私が今分かったのは郁斗君の膝の痛みは、怪我じゃなくて呪いだって事くらい。応急処置で、さっきは呪いを弱める簡易の術式を使ったから、今は痛みが引き始めてると思う」
しかし、それはその場しのぎの応急処置に過ぎない。一時的に弱めているだけで、呪いを取り祓った訳ではないのだ
なによりこの往来の中だ。呪いの解呪などという如何にも超常的なそれを、不特定多数に見せる訳にも行かなかった
「とりあえず、桃ちゃんもいるから後にしましょう?大丈夫、私がちゃんと何とかしてあげるから、ね?」
呪いという、如何にも人体に害がありそうな事を聞いて不安に揺れる悠を落ち着かせるように、肩をポンと叩き、落ち着かせる香はその目で見た郁斗の呪いが人の生き死にに関わるような大掛かりな物では無いことを見抜いている
「なんとか、出来るんですか……?」
「そんなに大げさなものじゃないからね。多分、私怨で呪いの真似事をしたら偶然成功しちゃったパターンだと思うよ。だから、ちゃんとした手順を踏んでないし、力も弱い」
ほら、もう立てるくらいになってる。と言うと、渦中の本人が何事も無かったように立ち上がっている
円を描くように歩いて見せ、痛みは本当に引いている様だった
「ね?とりあえずは大丈夫だから、後で一緒にウチに来てね」
ホッと息を付く悠にそう言って、香は皆がいる場所に戻る
「……別に今教えることも無いと思うのじゃが?」
「ちゃんと呼ぶ理由を伝えておかないと、それはそれで不安を煽るだけでしょう?」
その途中で照にぼやかれるも、香は香なりに考えて悠に伝えている。何も理由もなく彼女を不安にさせている訳ではない
「そうじゃがなぁ、もうちょっと上手いやり方があったと思うが?」
「それはそうかもだけど……」
理由も分からずに呼び出されるか、不安を募らせる内容だが、理由を事前に伝えられているか
どちらが良いとは一概には言えない。少なくとも香は事前に伝えてあった方が考える余裕があるだろうと思って伝えた、それだけだ
「もう大丈夫?」
「あぁ、さっきの痛みが嘘みたいだ。むしろ調子がいいくらいだ」
「ふーん、じゃあ当初の予定通り縁日のとこまで行く?間の様子見ながらだけど」
「また痛くなったら言ってくださいね」
とりあえずの応急処置はしてあるし、後は本人達の意向次第だろうと傍観を決め込むと、あっという間に予定通りの方向で話が進んでいく
「じゃ、行こっか」
ただ、悠と郁斗の物理的距離がまた少し縮まっているような気がするのは、後ろで見ていた香と照以外気付いていなかった
ポケ〇ンたのちい(殿堂入りしました。図鑑埋め頑張ります)
因みに手持ちはナッシー、ギャラドス、サイドン、ウインディ、カイリキー、サンドパン(リュージョンフォルム)です
あとGOではやくガブリアスを、はよ




