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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
気付き始めた心と身体
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のろい

当面の危険は無さそうなので二人は再びアーケード街へと戻る

変わらず人混みで溢れかえる様子に辟易するも、集合場所の広場への最短ルートは結局アーケード街を歩いて行くのが一番早い


如何に混んでいようともそれ以外の場所は人通りの少ない裏道か大通りを大きく迂回するしかないのだ


「まぁ、人混みに揉まれるのもお祭りの醍醐味という事にしましょう」


「と言うか、香さんは七夕飾り見なくて良いんですか?」


あまり七夕飾りに興味を示さない香を意外に思った絵梨は疑問をそのままぶつけてみる


逆にここにはいないが照の方が目新しさもあって、この祭りを楽しんでいるのだが、誘った上にこういったことには興味がありそうな印象を持っていた香の方がこういった飾り物に目が行っていないのはなんとも不思議に見えた


「あー、実は私がちょうど絵梨ちゃんの歳頃まで生まれ育った街に、同じような七夕祭りがあってね?あんまり目新しさが無いと言うか、ほら地元の祭りの出し物ってあんまり魅力を感じないじゃない?あれに似た感じかなぁ」


「へー、そうなんですか。それって香さんが生まれた世界でってことですよね?」


「そうそう。私も生まれはこことそっくりな、魔法とかそういうモノが殆ど滅んじゃった世界でね。そこでもこんな感じに商店街に大きな飾りを下げてたんだよね」


懐かしそうに言う香はそう言って視線を上げ、天井から釣り下がる七夕飾りを見つめる


その表情は何とも言えない寂しそうなもので、絵梨を何となく不安にさせるものだった


「その、帰ったりはしないんですか?」


「んー、もうその世界に私がいたって言う情報そのものが無くなっちゃってるからなぁ。家も無いだろうし、覚えてる人もいないだろうしね。それに、ちゃんと別の世界に帰る家はあるしね」


またこの辺りもややこしく、小難しい話なのだろう。きっと香自身も何か事情があって異世界を転々としながらジャッジメントを倒して回っているのは、うっすらと予想がつくことだ


「家族はいるんですか?」


「いるよ~。これでも結婚してるし、子供もいるんだ。3歳頃に、照と一緒に別の異世界に飛ばされちゃって、そこからずっと、帰るための旅をしてるって訳」


「えっ?!結婚して、子供もいるんですか?!か、香さん幾つなんです……?」


何気なく聞いたことで思わぬ爆弾を投下された絵梨は目を見開いて香を見る。当の本人は笑いながら受け流しているが、どう見ても25歳くらいのお姉さんという見た目だ


これで結婚子持ち。こんな美人を嫁にもらった男は誰なのかとか、子供もめっちゃ綺麗な顔してそうとか、どうでもいい思考が絵梨の頭を次々と掠めて行く


「あははは、絵梨ちゃん、私は人の姿をしてる妖怪だよ?見た目なんかじゃ歳なんて分からないよ。照何て、あの見た目で3000歳近いよ?旦那も今だと700歳くらいだしね~」


「さ、3000……、700……」


だが、それよりも歳の話で絵梨は自身の常識とはあまりにも違う年齢にくらりと目眩が来そうだった


自身が真っ当な人間では無いことは分かっているつもりだが、やはりそこはつもりだ

周りには普通の人間しかいないし、精々人間が生きるのは100歳ちょっと

90も行けば大往生、70~80が平均的なこの国での寿命


自分もきっとその位の寿命なのだろうなと漠然と思っていたが、本物の妖怪と言うのは平然と数百年生きるものらしい


照に至っては文字通り桁が違う、3000歳という事は紀元前1000年前の縄文時代から生きている事になる

そして、以前に神社に祀られていたんだぞなどと言っていたような記憶が絵梨の脳裏に過ぎる


「も、もしかして照さんって、めちゃくちゃ偉い神様だったとか……、そういうのって」


「ふふーん、どうだろうねぇ。ついでに言うと私も祀られてるよ~、異世界でだけど~」


「え“っ!?」


恐る恐る聞いてみたら藪蛇だった


もしかしたら自分たちはとんでもなく偉い人達と一緒にいるのではないか、思っているよりやばいことに足を突っ込んだ挙句、すんごい人らに師事することになっているのではと震えあがることになった絵梨であった


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