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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
色んな意味での先輩とダチになりまして。
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色んな意味での先輩とダチになりまして。

カポーンというお風呂特有の擬音はかの水曜日に発売される週刊漫画誌のなんとか1/2の作者らしい


そんな心底どうでもいい情報を脳内に浮かべながら、悠は温泉で温まった赤さとは別の赤さで真っ赤に染まりながら恥ずかし気に膝を抱えて浴槽の隅っこで縮こまっていた


「んもー、ちょっとおっぱい触っただけじゃん。可愛いなぁ」


「ちょっとじゃないです。おもいっきり揉まれました、先輩の方が大きいんですから自分の触ってくださいよ」


「ちっちっ、他の人のを揉むから良いのだよ」


「変態」


理由は分かり易く、勇が悠のおっぱいを後ろからむんずと揉みしだいた事が原因である

驚いた悠が悲鳴と共に背後の勇に肘打ちを放ち、蹲ったところにビンタまでお見舞いしたことでついさっきまで勇が撃沈していたが自業自得もいいところだ


「まま、冗談はさて置き。ちょっとおねーさんとお話ししようか」


「歳一つしか変わらないじゃないですか」


「んー、拗ねると屁理屈捏ねだすタイプか」


拗ねている悠の相手も程々に、周囲にまだ他の入浴客が来ていないことを確認して勇は悠の向かいに来るように湯船に肩まで浸かる


「まず単刀直入に聞くんだけどさ。悠ちゃんって郁斗君のこと好きなの?」


「……はい?」


「いや、郁斗君のピンチの時凄かったからさ」


いきなりこの人は何を言ってるんだと悠は目を丸くするが聞かれた訳を聞いて本人はそうとられても仕方ない状況だなと冷静に分析して違う違うと否定する


「郁斗が怪我で出来るだけ走るのも止められてるのは先輩達にも話をしましたけど、それウチの家で怪我したのが原因なんです」


「ふむふむ」


「誰かが悪いわけじゃないのは皆分かってて、本人も運が悪かっただけだって、そう言っています。でも、でもですよ」


言葉を連ねていくたびに悠の視線はどんどんと下がっていき、俯き、湯船の中で膝を抱えたその様子は勇から見てもいたたまれない雰囲気を放っている


「それでも考えるんです。あの時、ウチに呼ばなければ怪我しなかったんじゃないかって、怪我したのは私のせいじゃないかって」


「それはちが――」


「違うのは分かってるんです。そんなことは、分かってるんです。それでも、私はそう思えてしまって、郁斗のプロサッカーに行くって夢を潰してしまったような気がして……」


「だから、次は絶対助けたい。そういう事?」


こくりと頷いて答えた悠は以前として俯いたままだが、対する勇はその話を聞いて何でかみるみると笑みを深めて、ついには感極まって悠に飛び付いた


「うひゃぁ?!」


「いやー、もう可愛いな悠ちゃんは~~~」


「ちょっ、何の話ですか一体!!?」


バシャバシャと水飛沫を立てながらキャッキャッと一通り騒いで、抱き着く勇をなんとか引き剥がしたところで、話は再び元に戻る


「いやいや、私も恵まれてた方だけど、悠ちゃんも中々に恵まれてるし健気だなぁって思ったらもう可愛くなっちゃって」


「だからって抱き着かないでください!!あとどさくさに紛れて胸を揉もうとするのもやめてください」


「バレていたか」


当たり前ですと顔を赤らめて答えると、場の空気を変えるために咳払いを一つして勇が言った恵まれている、という発言について改めて考えてみた


「確かに家族は皆協力的ですし、郁斗には凄い世話になってます。いつかちゃんと恩返ししなきゃいけないなって思うくらいには」


「うんうん、良いよ良いよ。お姉さん応援してるから頑張ってね」


「……なんか別の意味にとれるんですけど」


「だってそういう意味で言ってるし」


郁斗ととはそういう関係じゃないし、なるつもりもない、悠はボソボソと小声で、しかししっかりと勇に聞こえるように反論する。どちらかと言うと抗議、という方が正しいのかもしれない


少なくとも、悠は友人として郁斗とこれからも付き合っていくつもりだし、いつかは郁斗の迷惑にならないように少しずつ距離を置いて行こうかと漠然ではあるがそう考えていた


郁斗はモテる。仮にも自分は男だが、今は周りは決してそうは見てくれないし、見られてしまうのだ

今は誰かと付き合う気はない、なんて本人はいつだか言っていたのだがその今がいつ突然終わるかなんて本人にも分からないことだろう



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