どうしてこうなったのか
「次はコンディショナーとトリートメントの使い方なんだけど。悠ちゃん、先に髪を拭いてちょうだい」
「ん?」
渡されたのは普段悠が使ってるのとは違う綿性のちょっと良いタオル。こんなのどこにあったんだと思いつつ受け取ると再び待ったを掛けられる
「ゴシゴシと拭いちゃだめよ。髪の毛をトントンと叩くように水分を取るの。頭の上は乗せて押し当てるだけで大丈夫よ」
「拭き方も大事なの?」
「大事よ。濡れた髪をゴシゴシ拭いたら酷いことになるわよ」
髪の拭き方も影響するのかと悠が驚いているうちにある程度の水分が取れ、桜にタオルを返す
そうしてようやく本題のコンディショナーとトリートメントの話になる
「では悠ちゃんに問題です。この二つの違いはなんでしょう?」
「えっ?二つとも同じようなもんなんじゃないの」
そう答えると桜はちっちっと指を横に振って再び不正解を伝える
よく詳しくない人には混同されがちだが、コンディショナーとトリートメントの二つは役割が全く違う
「コンディショナーは髪の表面を整えるもの。サラサラにしたり、保湿したりするのが役割よ。トリートメントは逆、浸透して内側から補修していくの」
全然役割が違うのよ、と笑いかけながら桜は置いてあるトリートメント剤を手に取る
今回は髪のダメージが特に酷い時にやるやり方で、普段はコンディショナー、週に二、三回程度をトリートメントにすれば十分だという
因みにやるときは片方だけ、両方やっても良いがそれは本当に髪質が酷い時だけらしい
そんなことになったらおそらくお説教ものだろうと悠はうすら寒いナニカを感じながら再び桜の解説に耳を傾ける
「よく間違えてる人がいるんだけど、髪を洗った後先にするのはコンディショナーじゃなくてトリートメント。先にコーティングしちゃったら意味がないのよ」
「さっき髪の表面に、って言ってたもんね」
この間違いはよくある物で、二種類使ってますと言う人に限ってコンディショナーからトリートメントと言う使い方をしていることが多い
実際はコンディショナーで表面を覆ってしまってからではトリートメン剤の効果が全くでなくなってしまうのでトリートメントからコンディショナーの順番だ
「トリートメントは手に取り過ぎないように、悠ちゃんは髪が長いのもあるから先に毛先からトリートメントを付けていくのよ。勿論、ゴシゴシやるのは厳禁。優しく撫でながらね」
桜の手つきを真似て、スルスルと髪にトリートメントを馴染ませていく。それが大体耳の裏当たりまで来たところで桜のストップがかかった
トリートメントとコンディショナーは頭皮にとってよろしく無いものらしく、頭皮に着けるのはNG。また、頭皮近くの髪の毛は生えたばかりなのでそんなにダメージが無く、トリートメント等を付けなくても良いらしい
そのため、毛先から10㎝を目安にトリートメントを付けるのは止めた方が良いようだ
「そしたら、コーム。まぁ、これも櫛の一つね。これで更に全体に馴染ませるの」
目の細かい、プラスチックで出来た平たい櫛でまた髪を梳かしていく。これで髪にさらに平均的にトリートメントを馴染ませることが出来るとのこと
そうしたら桜が悠の髪を手早く纏め。タオルで包んでしまった
悠もこれには見覚えがある。CMやドラマの入浴シーンで女性がよくやっているタオルを頭に巻いているあれだ
「これで少し時間を置いてトリートメントをしっかり浸透させるのよ。この間にお母さんは掛け湯して先にお風呂に入っちゃうわ」
今回はシャワーだけなのでお風呂は無しだが、桜はこのタイミングで入浴を始めるらしい
身体は洗わないのかと聞いてみるとどうやらトリートメント等はそもそもに肌自体に良くないらしく、身体についたままだとニキビの原因になったりするんだとか