色んな意味での先輩とダチになりまして。
観光案内所前のバス停からバスに乗り込んだ四人は一先ず目的地に一番近いバス停にたどり着くまでちょっとした休憩タイムとなっていた
「ふーん、こんなところにねぇ。ホント、良く見つけるよね」
「フィールドワークの時もそうだけど、近隣の地元住民の聞き込みってのは大事でね。初対面の人には警戒して話したがらない人も多いから情報引き出す技術っていうのは結構鍛えられてると思うよ」
男子組が見つけ出したひったくりグループのねぐらはここからバスで20分、さらにそこからは徒歩で向かう必要性のある場所で中々に手間だが野宿と比べられると背に腹は代えられない
「それに僕は情報を集めただけ。そこから場所を特定したのは郁斗君だよ」
「お、私の勘はバッチリだったね」
「なんて言うのかな、状況や情報を纏めるのが上手いって言うか、モノとかそういうのを俯瞰して見るのが凄い得意みたいだ」
なんでも前はサッカーをやっていたみたいだよ、と付け足した郁己は情報を纏め、場所を特定するまでに至ったメモと地図に視線を落とし、何か見落としが無いかの念のための最終チェックをし始める
これで外れたら目も当てられないが郁己たちは自信を持って特定しているので勇の方は安心して向かうことが出来る
彼ならこういったことでちょっとでも気になることがあればGOサインは出さない、恐らく郁斗君もそうだろうと何となく予想を付けつつ少し離れた後ろの方の席に座っている筈の二人を見ようと振り返ってみると
「えー、髪ほどいちゃダメなの??」
「女性としての身嗜みは最低限整える癖付けるためにな。これくらいなら慣れちゃえば苦痛にもならないから今はちょっと我慢しようぜ、な?」
「むー」
特訓のせいで乱れてしまった髪型を解いてストレートの状態に戻してしまおうとする悠と、桜からのお目付け役を言い渡されていた郁斗が髪をどうするかで一悶着していた
とは言ってもすぐに悠が頬を膨らませながら髪を纏め始めたので面倒がった悠を郁斗が宥めただけなのだが
「ねぇねぇ、郁己はどう思う?」
「どうって?」
その様子を見て、勇はニマニマとしながら郁己へと主語を欠いた質問をする
内容をいまいち察せなかった郁巳が答えるために聞き返すと勇はその笑みを更に深めた
「そりゃあの二人がその内付き合うかどうかだよ。私は正直超お似合いだと思うんだよねぇ、郁斗君面倒見良いし、悠ちゃんは郁斗君にべったりだし、なんかキッカケあればすぐに付き合っちゃうと思うんだけど」
興奮したように話すその内容はつまるところ恋バナだ、いやはや勇もいつの前にやらすっかり女子思考だなぁと考えつつ、郁己は自分の思ったことを素直に口にした
「どうだろうなぁ、結論はあの二人次第だけど悠ちゃんと郁斗君の二人は僕らみたいに何となくで付き合うようなタイプじゃないからなぁ。あ、いや勿論勇のことは好きだよ?でも、あの二人って割と頑固そうって言うか、型にハマり過ぎちゃうタイプのような気がするんだよね」
「あぁ、うん、確かにちょっと真面目過ぎるとこあるかも。そっかぁ、確かにそれだと進展するどころかまず異性として意識するってことが長い時間かかっちゃうのかなぁ」
「まぁ、勇の言う通りキッカケがあれば早いと思うよ。二人のどちらかにでもそれがあれば僕らよりも進むの早いかもね?」
「うひゃあ、早くくっ付かないかな」
ちょっと内容が下世話なものになったところで目的のバス停に到着し、一同は夕方の雑木林の前に降り立ったのだった
さぁ、作戦開始だ
雑木林の中に一本伸びる古ぼけたアスファルトの道を4人は駆け足で進んでいく
「郁斗、足は大丈夫?」
「あぁ、これくらいなら平気だよ。むしろリハビリには良いかな」
郁斗の足の怪我を機にかけつつ、稽古により今までよりもずっとスムーズな脚運びになった悠はヒビと苔でボロボロになったアスファルトを駆けていく
勇は言わずもがな。意外にも郁己も体力にはかなりの自信があるようで元来運動の出来る3人にしっかりと着いて来ている
「見えた、あそこだ」
「車体が破損したあのバイクも止まってるし間違いないね。今の現在、中に人がいるかはまだ分からないし、高嶺さんのバッグがあるかどうかも運次第だけど……」
駆け抜けた林道の先に見えて来たのは既に人が入らなくなって久しいであろう蔓性植物に埋もれた建物




