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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
色んな意味での先輩とダチになりまして。
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色んな意味での先輩とダチになりまして。

わざわざ別荘を持つような小金持ちがひったくりなんて軽犯罪を犯すとは考えにくいし、狙うなら空き家、しかも奥まっていて隠れられそうな場所が適しているだろう


次々と郁斗はバツ印を増やしていき、ドンドンと候補を潰していき


「これで、所有者や道路に面した別荘や建物は潰し終わりました。幸い、人気のある別荘地という事で奥まっていても所有者がいるのばかりです」


「つまり、残った建物が連中のアジト」


「ハイ、俺の予想では――、ここです」


残った候補の最後の一つ、奥まった場所にあり、古い道路の先にあるというその別荘は所有していた不動産屋も倒産してしまい、所有者不明だというまさにおあつらえ向きの古別荘だった















「さてさて、頭を使うことは向こう(男組)に任せて、私たちは私達でやれることやっておかないとね」


「やれることってなんですか~。うぅ、野宿確定なんてやだよ~」


カフェに残った女子二人。ズーンと分かり易く落ち込み、テーブルに突っ伏す悠の頭をよしよしと撫でてから立ち上がる


「そんなの簡単。今から取り返しに行けばいいんだよ」


突然立ち上がったので突っ伏した頭を上げて見るとそれはもう、にこやかな笑みでとんでも発言する勇がいたのであった






「勇さん、本気なんですか?いくら何でも警察ですら今すぐ出来ないことを私達高校生がどうにかしようって……」


伏し目がちになって心配そうにする悠に対して、勇の方は堂々としたもので街の公民館に場所を借りて二人は向かい合っていた


本来は地元の方々のみの利用というのを無理言って貸してもらっている次第だ


「ごちゃごちゃ言わないの。黙って彼氏君の事信じてあげなよー」


「か、彼氏じゃないです!!元男なんですから、男と付き合う気はないですよ」


「んー、それは郁巳と付き合ってる私への当てつけかな?」


「そ、そういう事じゃないです!!」


少し意地悪な返しに悠は少しムキになって応えるとおやおや~と勇がジト目でこちらを見て来る


「ははは、冗談冗談。その辺の話はこの問題が片付いたら先輩後輩としてゆっくり話そうよ。今は私達に出来ることをしなくちゃね」


慌てて弁明するとパッと表情を明るく変え、そして次に凛とした表情へと変わり、前振りも無く構える


一瞬の変わり身に反応した悠もすぐに構えを取る。と言っても剣も竹刀もないので得意の剣術の構えではなく、無手の基本的な構えだがやはりそこは武術を長年に渡って叩き込んで来た身

一瞬にしてその雰囲気はお喋りモードから戦う時のそれへと切り替わる


「お、流石だね」


「あ、あのこれは……」


一瞬で思考も雰囲気も切り替わった様子を見て満足げに笑った勇は大したことはないよ、と構えを崩さぬまま答える


「とりあえず組手とかそういうのじゃないから安心して。悠ちゃんは急に体格が変わっちゃったから重心が今までとがらりと変わっちゃって、咄嗟の時に転んだりとか躓いたりとかしちゃうんだよね?」


「はい、ある程度は動かせるんですけど。歩幅とか、リーチとか、脚運びとか筋力とか、微妙な違いとか明らかに違うのが細々とあって、精々ちょっと武芸をかじった女の子くらいで……」


その言葉と共に悠はガックリと肩を落とす。少し前、退院してすぐ後に道場に向かったのが、結果は散々なものだった


剣先はブレ、体幹や歩幅も合わず思った通りに動くどころか道着の裾を踏んでつんのめる始末だったのを思い出したら悠のテンションはものすごい勢いで急降下していった


「悠ちゃんにはしっかり聞いててほしいんだけど。私はさ、ゆっくりじっくり女の子になって、周りの人にも恵まれて、とってもいい環境で女の子になっていった。気が付いたら好きな人は郁己だったし、悠ちゃんみたいに急な身体と環境の変化にもそこまで悩まなかったと思う」


しっかり、ゆっくり、悠にじっくりと聞かせるように勇は言葉を紡いでいく

不思議と悠はそれに口を挟む気にはなれず、黙ってその言葉が終わるのを待っていた



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