色んな意味での先輩とダチになりまして。
「あ、なるほどねー。だから重心おかしいまんまだったんだ」
「はい、まだこの身体になって半月位で……。この格好もお母さんに合わせてもらったんです。一応、簡単なメイクとかくらいなら自分で出来る様になったんですけど、身体を動かすこと自体に全然慣れてなくて」
「どう?面倒見るのは大変じゃない?」
「いや、まだ学校に行ってる訳ではないんで今のところは何とも。学校に行ってからが本番っすかね」
疑問点が解決され、成る程なーとうんうん頷く勇に色々と自身の事情を説明していく横でその保護者役の男二人が大きな共通の話題を持つことによって話はちょっと前よりも盛り上がっている
「そういえば、悠ちゃん」
「はい?」
こてんと首を傾げる悠を見て、勇は悶えるような仕草で鼻頭を押さえて何かに耐えると無駄にキリっとしたキメ顔をするがむしろ悠はその行為にクエスチョンマークを頭上に増やす。チラリと男子二人に視線を向けると
「彼女、ホントに半月前まで男の子だったの?」
「ええ、女子には爽やか可愛い系って言われてました」
「あぁ、成る程……」
等という会話が小声で交わされており、増えたクエスチョンマークがさらに増えるだけだった
「ゴホン。で、この後はお代払ってホテルのチェックインするんだけど。お財布は取られてないんだよね?」
「あぁ、それなら母が念には念を入れて郁斗に持ってもらう様に……、よう、に……」
鞄をひったくられた悠に財布の有無を問う。これから泊まるホテルはチェックインの際に料金を払う前払い制のホテル。両親から受け取ったそれなりの額のお金はこういった時のために女性の悠ではなく、男性の郁斗が持っているように指示されていてその通りに悠の財布を郁斗が預かっていたのだが、何やら顔色が怪しい
「郁斗、新幹線乗る時さ。両手塞がってるからって私が財布取り出して、払ったんだよね」
「あぁ、そうだな」
「そのあと、私どうしたっけ」
「どうしたって、そりゃお前――。ああぁぁぁ……」
それらの一連の動作を思い返した時、二人は揃って頭を抱えた
郁斗の両手が塞がっていて、何気ない親切心で財布を取り出した悠。特に気にもせず、悪いな位の感覚で済ませた郁斗
その実に自然で当たり前のように行われた連係プレーのその先、悠も郁斗も特に気にすることなく新幹線の切符は購入され、そのままごく自然な流れで悠のバッグに財布はしまわれる事となる
つまり、現在二人は帰るための旅費も失ったどころか、そもそもに今晩夜を明かすホテルの代金すらもかっぱらわれた事になるのだった
「……どうしたもんかなー」
「期待した目で言われる側も結構大変なんだからな」
絶望でテーブルに突っ伏す二人を横目にニヤニヤとした笑い顔と視線を郁己に向けた勇
それにため息を吐いて、伝票を持って席を立った郁己はそそくさとお会計を済ませて、店外へと足早に消えて行ったのだった
「ほらほら、間君。ちょっと郁巳の手伝いしてきてよ。私の勘が正しければ、君、頭良いと思うし」
「え?あれ、いつの間に」
「ほらほら早く行った行った」
変わらず突っ伏している二人の片割れ、郁斗の肩を揺すって起こすと半ば追い出すように立たせて郁己の後を追う様に適当に言いくるめる
その様子に首を傾げつつも、郁斗は仕方なく既に店の外に行った郁己の後を追いかけるのであった




