色んな意味での先輩とダチになりまして。
絶妙なまでに真実に近づいておきながら、その行為に一切の悪意や攻撃性は無い
敵意があるなら持ち前の警戒心で身構え、気持ちもその対策に切り替わるが今回はそれがない
「そうじゃないなら直した方が良いとも思ってさー。見ててびっくりしたよー、女の子なのに重心の動かし方とか丸々男の子なんだもん」
「えと、あの……」
「もしかしてホントは男の子なんじゃないかってなんて思っちゃってさー。いやー普通そんなことは無いのは分かってるんだけど」
「……ふええぇぇぇぇ」
「え、あれっ?!どうしたの!?えっ、えっ」
結果、言い訳も思いつかず、ズンズンと自分の秘密に迫って来る勇に少しばかりの恐怖心とばれたらどうしようという不安でパニックになった悠が本人の意思とはほとんど無関係なレベルで見事に泣かされる羽目になった
「全くお前は……」
「め、面目ないです……」
ボロボロ泣きながら帰って来た悠とおどおどしながらその手を引いて席に戻って来た勇の二人に驚いた男子二人が詳しい話を聞いて、郁己が大きなため息とともにジトリと睨むと勇は小さい身体を更に縮こまらせて謝る
悠の方は郁斗に宥められながら、泣いてる悠に見かねたお店の女将が特別に出してくれたところてんを啜っている。酸味の聞いた酢醤油とからしがのど越しの良いところてんと見事にベストマッチしていてとても美味しいようだ。泣きながらちゅるちゅると啜っている様は中々に不思議な絵面であるが
「ま、逆に説明する手間が省けたかな。ね?郁斗君?」
「そうっすね、まさかこんなことが悠以外の身にも起こってたなんてのは信じがたいっすけど、郁己先輩たちが嘘をつく理由なんて全くないし。俺たちとしてはむしろそういった面での先輩がいるってのはすげぇ頼りになります」
「ははは、僕らの経験が参考になるならぜひ協力するけど、あまり期待しないでほしいなぁ」
「いやいや、期待してますよ。先輩」
男二人で分かりあったような会話を繰り広げる女子二人は何のことやらと揃って首を傾げ、こちらはこちらで顔を見合わせてお互いがお互い理解出来ていない旨を伝える
「別にそんな難しい話じゃないよ」
「単純に悠と金城先輩にはとんでもない共通点があったってだけの話なんで」
「共通点?お互い武道家の生まれなのは分かってるよ?」
「違う違う、そんなんじゃなくてもっと重要なところでさ君たち二人は――
『元男の子』だったって言う凄まじい共通点があるんだよ」
「「……っ?!?!」」
まるで何ともないようにカミングアウトした郁己に悠と勇はしばらく意味を考えた後、声にもならない声で驚きを示し、目を見開いた
ちゅるんと、悠が勢いよく啜ったところてんの汁が郁斗の顔に掛かったが黙って拭いて文句も漏らさない辺り出来た男である
「いやいやー、郁己~。私みたいに玄神様の呪いとかそんなんじゃあるまいし……」
「二人の変化のアプローチは全然違うよ。勇が玄神様の呪いで徐々に変化していったのに対して高嶺さんは薬物投与による急激な身体の変化らしい」
「げ、玄神様の呪い……?」
「や、薬物投与……?」
「「いやいや、そんな非現実的な」」
「非現実の塊みたいな人らが何言ってんっすか」
お前が言うなとはまさにこのことである
画して、二人は同じ武術家系の生まれで、その元跡取り息子であり、今は可愛い女の子になった奇妙なくらいに境遇の似通った相手だという事が判明したのだった




