色んな意味での先輩とダチになりまして。
「この荷物、君たちのだろう?」
「え?あぁ、すみませんわざわざ」
悠が女性に声を掛けられてる間に郁斗はまた別の人に肩を叩かれ、応対していた
こちらは男性、眼鏡をかけたどことなく理知的な、勉強が得意そうな文学系の人でやはり年の頃は同じくらいだろう
先程、女性を呼んでいた男性のようだ
「ひったくりなんて酷い事するもんだよねー。こんな可愛い女の子にさ」
「二人組でやってる辺り常習犯なのかもな。警察は周りの人が呼んでくれてた様だったけど怪我はない?救急車、とはいかなくても近くの診療所くらいには行った方が良いよ」
仲良さそうに話すあたり、やはり二人は知り合いなようで男性も悠の容態を気にかけ、アドバイスもくれる。見た目通り頭も回るタイプらしい
「あんな無茶までしてもらってありがとうございます。私、高嶺 ゆ、じゃなくて悠って言います。高嶺 悠です」
「間 郁斗です。宮城の笠山ってところから来てます。歳は17、こいつも同い年です」
自己紹介もしていなかった二人は謝礼もそこそこに自己紹介。その二人の自己紹介で、特に宮城、という地名に目の前の二人はピンと来たように目を合わせてまたニッコリと笑った
「もしかしてご両親の代わりに来たりしてない?私、金城 勇。私達も両親の代わりに来るように言われて上のホテルで待ち合わせなんだよ」
「そういう事。俺は坂下 郁己。歳は18で君たちより1個上だね。よろしく、高嶺さん、間君」
その自己紹介に今度は悠と郁斗が目を合わせる番。しばらく何があったのかを処理しきれずに呆然とした後
「「ええぇーーーーーっ?!」」
とても珍しい、二人揃っての叫び声が那須温泉郷に響いた
「いやー、驚きだよ。まさか助けた子が今日合流するはずだった人だったなんて。こんな偶然あるんだねー」
変わらず満面の笑みでトークを繰り出す女性、もとい金城 勇さんは今回の急な旅行で初顔合わせになるはずだった悠の父の友人の娘さんらしく。本人も玄帝流と呼ばれる合気柔術の達人らしい
柔らかくも所々がちょっと跳ねてる髪の毛は彼女の破天荒さや無邪気さを表している様でセミロングの黒髪を一つに結って肩口から垂らしている
あまり背は高くなく、身長は160ちょっとの悠から見ても少し小さい。150後半くらいだろうと思われるその小柄な身長とは裏腹にそのボディは魅惑的の一言に尽きる
所謂ボンッキュッボンッ、出てるところはしっかり出て、引っ込むところはしっかり引っ込んでいる
間近で見た悠が「私よりちっちゃいのに私よりデカい……」と漏らして郁斗に後頭部を引っ叩かれたくらいである
服はゆったりとした白地に赤と黒のボーダーが入ったロングワンピースに白のパマナハット。靴は編み込みのショートブーツ
ちょっと夏を先取りしたような格好で女の部分を前面に押し出している辺り、彼女は自分の武器が分かっているタイプのようだ
「ま、ともかく怪我も少なくて良かった。警察の話だと最近多いらしいから勇も気を付けてくれよ」
「おっけー」
気楽に応える勇に苦笑いするのはその彼氏、坂下 郁己。度の強い眼鏡とあまり自分を装飾しない性質のようである彼は実にシンプルに全体を青系で統一したシャツスタイルだ
青のチノパンに勇と合わせたのかボーダーのシャツ。上に濃紺の8分丈Yシャツを重ね、高校生と言うよりは大学生っぽい落ち着きが見られる
そんな二人を伴った計四人は先程の事件現場から50mほど先に在るお土産屋さんの二階にあるカフェへと足を運んでいた
木造家屋の落ち着きのあるオレンジ色の室内灯が優しい雰囲気を店内に満たしている中々こじゃれたお店だ
「まぁ、コイツ大きな怪我したことないんで」
「それは信頼されてるのか馬鹿にされてるのか」
街の診療所へ赴き、診断と治療をしてもらい、警察からの事情聴取も終えた4人はこのカフェで昼食兼、一息ついているという具合だ
山で採れた山菜を使った蕎麦やすいとん、善哉などを楽しんだ一行は和気あいあいとした雰囲気で会話も弾んでいった




