非日常の足音
「ほんっとうにごめんなさい!!……アンタも謝るの!!」
「んぐっ?!」
悠と戦っていた釣り目の女性の頭をガッシリ掴んで無理矢理頭を下げさせたもう一人の女性が揃って悠の前で頭を下げる
「えっと、まず説明とかをしてもらえると……」
「ほれ、謝る必要などないではないか。別に迷惑をかけ――」
「アンタは黙ってなさい!!!!」
「ガフッ!!」
困惑する悠が状況の説明を求めると、しれっとした顔で謝る事は無いとのたまった女性がもう一人の女性に再び凄まじい拳骨を打ち込まれて地面に転がる
人体からしてはイケない音が聞こえて引き気味になる悠達だったが、まずはこちらに真摯に謝罪する女性の話を聞くのが正解だろう
「バカがごめんなさい。あぁ、もうこんなに怪我させて……!!治療もしながら話をしましょ?社の前に腰掛けて、ほら」
「あ、はい」
言われるがままに社入り口の階段に女性と並んで腰掛け、郁斗も欄干部分に腰掛ける
因みに絵梨は未だにお社の中で格子窓にへばりついている
「……香さーん、出してもらっても良いですか~?」
「あ、ごめんごめん。ちょっと待ってね……、ハイ良いよ」
「ふぅ、危うく蚊帳の外になるところだった……」
申し訳なさそうに、そして物悲しそうに格子窓越しにこちらを見つめる絵梨を女性が中空に何かをする動作をすると、社の戸は独りでに開き、絵梨は無事外に出られた
そのまま悠の隣に腰掛けると、三人は女性からの説明を待つばかりとなる
「えーと、まずは自己紹介だね。私は香、絵梨さんをこの空間に保護した張本人って奴になるのかな。で、君とバカスカやり合ったのが照。私の仕事仲間と言うか、共通の目的を持った戦友ってところかな」
君達のことも簡単に教えてくれる?と目で訴えて来た女性はその間も何もない中空に忙しなく手を動かし続けている
そんな香は照と同じ黒髪の美しい同じく20代半ば程度と思われる。照と違うのは照よりもずっと長い、足元まで届くかと言う髪を緩く肩口で纏めているところと、顔つきがどちらかと言うと柔和で大人しそうな印象を持つ
照がヤンキー上がりなら、香は良いとこ育ちのご令嬢と言った具合だろう
服装もゆったりとしたシャツに、淡い黄色のフレアスカートで見事にこの二人は対局な見た目と性格をしているらしかった
その様子に首を傾げながらも悠と郁斗も自己紹介を始める
「そっかー、高校生二年だから16~7ってとこだよね?あのバカそんな子供となにやり合ってるんだか……」
ブツブツと今も地面に転がっている照と呼ばれた女性に対して恨みがましく文句を言った香はごめんね?とまた悠に声をかけ、今度は悠の身体をペタペタと触り出す
「えっと、何を……」
「あぁ、ごめんね。説明無しじゃ分からないよね。今怪我してるところに治癒の術式張り付けてるからちょっと待ってね?服も汚れとほつれが酷し洗浄と修繕の術式使うから」
「じゅ、術式……?」
「そ、術式。まぁ、簡単に言っちゃえば魔法の計算式だよ。魔法剣士ちゃん?」
そうニッコリ笑って話しかけられても悠には何のことやらさっぱりで、救いを求めるように郁斗や絵梨を見るが、郁斗もよく分かっていないようで絵梨は苦笑いだ
「香さん、それだと何も知らない私達は伝わらないかなって……」
「あっ、そうだよね。うーん、どこから説明したものか……」
「儂らは簡単に言ってしまえば異世界人や異星人的な存在じゃよ」
腕を組んで考える香がしばらく唸っていると、地面に転がって蹲っていた照がぶたれた頭を擦りながらこちらに歩いてくる
その説明に顔を顰める
「ちょっと、いきなり無関係の子に説明する気?」
「連中に狙われてる絵梨と親しいのは見て分かるじゃろ。何も知らずとも巻き込まれる可能性は高いじゃろうし、お主も見たじゃろ。その小娘の実力、連中の雑兵程度なら相手にもならんぞ」
「それはそうだけど……」
なにやら渋る香と巻き込んでしまえと主張する照とでまたしばらく言い合いが発生するが、結局は理詰めに負けた香が渋々と事の詳細とやらを話し出す
「そうね、絵梨ちゃんのお友達なんでしょう?加えて悠ちゃんのその戦闘能力の高さ、正直に言って私達が追う敵と戦うのには是非借りたい手だしね」
「敵、ですか」
「ええそうよ。ありとあらゆる世界の敵、全ての世界と言う世界を殺そうとしてる秘密結社、『審判』をね」
そう言い切る香の目は力強く、眉唾物なこの話に嘘偽りは感じられず、悠達はよりその困惑を深めることとなった
おめでたい事に無事100Pを超えました
こんな途切れ途切れの更新でも読んでくださっている皆様に感謝御礼を申し上げます
そして、そろそろ数年前から告知しているあけちちもあき様著の『ダチが女になりまして。』とのコラボ話がようやく始まりますことを告知させていただきます
こちらも大変お待たせしました。内容もお墨付きを頂いておりますので期待していてください(ハードルを上げて行くスタイル)
この章が終わり次第の公開ですのでもう少々お待ちください
ではでは、今後とも俺を返せ!!をよろしくお願いいたします