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第2話 間が悪い二人

第2話 間が悪い二人


「とってもお洒落なバーですね!

 まるで綺麗な海の底にいる様に錯覚してしまいます」


赤石さんは俺が本来の二次会に使おうとしていたバーを見て目を輝かせていた。


地下にあるこのバーはとてもお洒落な内装をしている。


海をテーマにした綺麗な水色を基調にした壁紙にネオンの光が当たる事で海の美しさや、神秘性を表し、つい目を奪われてしまう。


ここには二次会以外でも一人で落ち着きたい時にも利用している店なので、店員は何時も通り俺を案内してくれる。


「博さん、いつものでよろしいですか?」


「ああ、よろしく頼むよ」


俺は赤石さんと並んでカウンターに座ると、店員に何時もの物を持ってこさせるようお願いした。


「そちらの方はどうされますか?」


「俺と同じので頼むよ」


赤石さんはここに来るのは初めてなので、俺はここで一番お勧めのカクテルを出してもらう事にした。


「俺が頼んだのはここでは一番お勧めのカクテルだ

 赤石さんも気に入ると思う、お代は俺が払うからお金の事は気にしないで」


「はい、ありがとうございます

 博さん」


赤石さんはにこやかな表情でお礼を言った。


しかし、そこから会話が続くことはなかった。


考えてもみれば俺は46歳だ。そして赤石さんは20代。共通の話題がないので、あまり話が弾まないのも仕方のない話なのかもしれない。


完全に二人きりで話したのも初めてである。


だが、俺自身の心がこのネオンの光に呑まれてしまったのだろうか。俺の心臓の鼓動は加速していた。


何とか会話の糸口を探そうとするが、中々上手い話が出てこない。


飲み会の時に語るうんちくや、面白い話ならいくらでも話せるのにこの時ばかりはいくら捻り出しても気の利いた事の言えない自分が憎らしくて仕方がなかった。


そう思った時、赤石さんは二次会に誘う前、相談したい事があると言っていた事を思い出す。


俺は本当に馬鹿だ。最初に言われた事を忘れてしまっているのだから。本当に俺の心はネオンの海に呑まれてしまっているのかもしれない。


話題を見つけたため、俺はこの無言の状態を打開するため、勇気を出して声を振り絞る。


「赤石さん!」

「大原さん!」


「「あっ……」」


俺達は同時にお互いの名を呼んでいた。


そして俺は赤石さんの用を聞くために黙ると、赤石さんも同じことを考えたのか黙ってしまった。


お互いに気まずい無言の状態が続く。


このままでは不味い……ここは年上としてこの状況を打開しなくては。


「あのっ……」

「すみません……」

「お待たせしました、こちらカクテル2つお持ちしました」


俺と赤石さんがまたもや同時に喋り始めた所に、更に同時に頼んでいたカクテルが届いた様だ。


目の前にカクテルが一つ並ぶ中、またもや無言になるが……気が付くと俺と赤石さんは何故か笑ってしまっていた。


「あっはははは!間が悪すぎるよな!俺達!」


「ふふふ……そうですね」


俺達はしばらく意味もなく笑っていると、俺は持ってこさせたカクテルを一口飲んだ。


赤石さんもそのカクテルを飲む。


「これとっても良いですね!

 博さんはこんな素敵なバーとこんな素敵なカクテルを知っていたんですね

 私ももっと早く知りたかったです」


赤石さんは嬉しそうにカクテルを褒めてくれる、その様子に俺は喜びを感じていた。


「また機会があれば連れていくぞ!

 お財布の関係とかもあって毎回驕りってわけにはいかないかもだけど……」


俺の財布事情を口ごもる姿を見て赤石さんはまた笑顔でこう言う。


「ふふふ……

 大原さんって正直なんですね、そこは普通毎回奢ってやるって嘘でも言いますよ」


「ごめん、ごめん、俺頼りなくってさ」


俺は頭を掻きながら、つられて笑う。


「でも変に嘘をつかれるより、正直に言ってくれる男の人の方が好きですよ」


赤石さんの何気ない言葉に俺の鼓動は更に加速していた。それどころか身体が熱い。


アルコールが回ってきたせいだろうか、しかし、一次会の連中がだらしなくてあまり飲めていない。


しかし、俺は身体の火照りと心臓の加速を残っている理性を使って何とか和らげる。


赤石さんは20代の女性、20近くも離れている俺に気があるわけがない。


万が一にも気が合ったとしても俺には家族がある。


この雰囲気に呑まれるな……俺は赤石さんの理想の上司として振る舞わなければならない。


そう心に思っていると、赤石さんはこう切り出した。


「そういえばさっき、大原さんはさっき私になんて言おうとしたんですか?」


相談の話である。正直な所また忘れていた。


俺は今度こそ忘れないように、そして理想の上司として相談にきっちり答えてあげられるよう相談の件について話を聞く。


「相談の件だよ……赤石さんは相談があるから二次会をやろうと言ったんだろう?」


「私がさっき言おうとしたこともそうです……ふふふ

 大原さんとはやっぱり色々合うんですね!」


俺は赤石さんの言葉と笑顔にまたもやドキッとさせられるが、ここは相談に答えなければならない。


先ほどの様子とは異なり、実際に話を始めようとすると切り出しづらそうな赤石さんを見て俺は真剣な眼差しでそれを見守る。


「実は……私ある男に付け回されてるんです」


付け回されている……ストーカーをされているという事か。


赤石さんはストーカー被害を受けているのか……赤石さんは確かに綺麗で虜になった男の気持ちも分からなくはないが、赤石さんを困らせてしまうとは許せない。


俺は赤石さんの悩みを解決すべく、赤石さんに質問をする。


「ストーカーされているんだね……警察には連絡した?誰なのか検討はついてるの?」


赤石さんは困った様子で、口ごもる。


何か事情がありそうだ。しばらくするとこう言った。


「……け、警察には色々あって言ってないです

 でも、その男は分かっています……知り合い……ですから……」


「誰なんだい?」


俺がその男の事を聞くと、赤石さんは震えているように見えた。


俺はその様子を見て、ゆっくりで良いから勇気を出してと励ます。


それを聞いた赤石さんは胸に拳を作って、次の瞬間勢いよく口を開いた。


「き、木曽って男です!

 木曽雄平きそゆうへい……私の昔の知り合いです」


続く


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