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社用車チートは異世界で最強でした! ~リーマン異世界横断1000キロの旅~  作者: たまり
三章: シャコターン防衛戦 ~死闘! 二人目の呪怨六星衆(ヘキサマヴナ)~
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 リリナとの別れ、そして新たなる目的地へ

 午後3時を回った頃、俺たちはテパの村へと戻ってきた。


 シャコターンの町から村まで、およそ30キロの道を走った事で、ガソリンは更に2、3リットル消費したようだ。

 ガソリンの残量メータは6割程の位置を指している。つまり半分より少し上の位置を指しているだけという微妙な量だ。

 

 確か、社用車のカタログ上のタンクの「総量」が55リットル。異世界に来る前に俺はほぼ満タンにしていた。


 それが今は30リットルを切るところまで減っていた。


「ガソリン、もう6割しかないなぁ……」

「まだ6割もあるんだから大丈夫よ!」


 若干気弱な発言をする俺に対し、助手席のパトナは明るく平気な顔をしている。

 

 コップの水が半分あるとして「もう半分しかない!」と嘆くか、「まだ半分ある!」と余裕をかますかは個人差があるだろうが、俺とパトナは丁度いい組み合わせと言えた。


 そして、リリナとの別れの時が来た。

 危険な旅に巻き込んでしまったが、リリナは村を救うという目的を達し、村の人々を救った英雄ということになるだろう。


「旅のご無事を祈っています……! かならず、この村にまた来てくださいね!」

 少女リリナは別れ際、丸く大きな涙を浮かべていた。


 何度も何度も礼を言いながら、村長の祖父や、両親と共に頭を下げて、俺たちに手を振っていた。


 なんともまぁ、可愛らしい。

 

「サクサックっとガソリンを買ったら戻ってくるよ!」

「ついでに、悪い魔法使いもブッ飛ばしてきちゃうからね!」


「はいっ!」

 リリナが大きくうなづいて、笑顔を見せてくれた。


 俺とパトナは、何度も振り返りながら手を振って、村を後にした。


 別に永遠の別れじゃない。

 ガソリンが手に入れば、ひとっ走りで遊びに来れる距離だ。

 

 そして、俺たちの旅の目的も、少しずつではあるけれど明確になってきた。

 恐ろしい魔法使いの秘密結社ブラック・カンパニー。

 その最強の幹部である『呪怨六星衆(ヘキサマヴナ)』を、俺たちが倒す事で、この国に平和が取り戻せる。

 それは最初に俺とパトナが、女神様から言われた「世界を救いなさい」という言葉と合致することでもある。


 テパの村を襲った連中は、俺たちがこれから向かおうとしている、ヒューマンガースの方向から来たらしい。同じような事をシャコターンの町でも聞いた。

 つまり、残る4人の魔法使いも、街の方向にいる可能性が高い。

 更に言えば、ヒューマンガースの街の南方、およそ300キロ先には、神聖フォルトゥーナ・モーレィス王国の聖都、ヒースブリューンヘイムがあるのだという。

 

 おそらく、そこがこの旅の最終目的地になる予感がする。


 パトナのナビゲーションによると、ヒューマンガースの街まで、ここから180キロ程であることが分かっている。


 180キロという距離は高速道路なら2時間で着く距離だ。

 とはいえ、残念ながら道路事情が良くないこの世界では、速度はあまり出せない。せいぜい時速30キロから40キロ程度。おそらくここから半日以上必要だろう。

 午後3時を回った今から出発すると、途中で夜になる。

 

 そこで俺たちは、夜間の移動の危険性を考えて、今夜は途中で車中泊(・・・)をすることにした。そして、明日の朝一番で街を探訪するという予定を組んだ。


 街でガソリンを手に入れるための資金、お金はミッションクリア(?)の報酬として300枚の金貨がある。

 車の荷物室には、シャコターンの町で貰った毛布に食料、水や着替えに日用雑貨と、多くの物が積まれているし、もちろんテッシュもある。


「荷物が増えたなぁ」

「そだね、なんだか楽しい」

「まぁな」

 後ろを振り返ると、確かに賑やかな雑貨屋を覗いている気分になる。

 鍋があったり、飲料水の樽があったり。おまけに後部座席の屋根部分の取っ手には、ソーセージがアクセサリーのようにぶら下がっている。

 なんというか、キャンピングカーのような気分でワクワクしてきた。


 何よりも……今夜はパトナと二人きりなのだ。


 後部座席をたたみ、フラットにすれば大人二人が足を伸ばして寝る事が出来る。

 

 もちろん、密着してしまうが、それは仕方の無い事だ。

 

 もう一度いう。仕方の無い事だ。


 ツナギにポニーテールのパトナと視線が交差する。

 ちょっと照れたように、口元が緩むのがまた、なんとも可愛い。


「じゃ……じゃ! いこうか!」

「うんっ! いこう!」


 パトナが笑顔で拳を前に突き出す。俺はパトナの笑顔から元気を貰っているのだと、気づかされる。


 ゆっくりアクセルを踏み加速すると、数分でテパの村は見えなくなった。


 しばらくは草原地帯が続いていたが、魔物の類は出なかった。50キロほど走ったところで草原地帯が終り、やがて木々が増え始め、更に30キロほど進んだところで森へと差し掛かった。


 時刻はもう5時。

 太陽も傾き、空は黄色と青にグラデーションがかかり始めている。

 

 森は道幅も狭い。俺たちは慎重に車を進めてゆく。


「道は大丈夫なんだよな?」

「うん、馬車が通れる道だから、この車でもいけるよ。速度は出さないほうが良さそうだけどね」


「あ、川だ!」


 しばらく進むと森の木々が開け、綺麗な川が流れている場所へ差し掛かった。


 川べりが野原のようになっていて、おそらく旅の馬車の宿営地になっているのか、焚き火のあとがいくつか見える。


 よく見ると『王立街道・西の森宿営地。我ら魔術師、聖なる守りの祈りを捧げる』


 と書かれた木の看板もある。


 どうやら魔法の結界か何かが張られているのか、森特有の恐ろしい感じが、遠ざかった気がした。


「ここなら安心して野宿できそうだ」

「うん! キャンプ! キャンプしよっ!」



 次回、二人で初めての車中泊♪


【今日の冒険記録】

・所持金:3560円(日本円)

    :300リューオン金貨


・所持品:使えないスマホ、中古PCパーツ、毛布、工具一式、ライター2個、トイレットペーパ、テッシュ


・町で補充した食べ物や雑貨。毛布など

・水、小さい樽で2つ。(36リットル)


・走行距離:180キロ

・ガソリン残量:29リットル


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