拾伍章─暗号文・解読─
執事「何ですと!?」
アレシア「そんなことはあるまい。あれは国が編成した兵団だぞ。何故長である国王を殺す?」
健「政治に不満を持ったのかどうか、なんてことは知らん。だが、この暗号文に、そう書いてあるんだよ。」さ聡「もう解けたのか!?」
健「あぁ。簡単だ。子供だましの暗号だよ。もっとも、この国が漢字の国で助かったというところかな。」
調「漢字?」
健「そうだ。一行目はいいとして、まずは二行目。『二分されし謎を一つにし』って書いてあるだろ?これは、二つの漢字を一つにしろってことなんだ。その証拠に、『獣の里』。『獣』っていう字を偏に直して、『里』っていう字とくっつけると、『狸』になるだろ?これは子供用によくある暗号で、『』をく抜けっていう意味なんだ。最初の項から平仮名の『た』を抜くと、スッキリするだろ?」
優「確かに。」
明「ホントだ。」
健「んで、二項目。偏と旁になるような漢字を出てきた順番にくっつけて無駄な平仮名を省くと─」
流「仁手連支体学寸法口頭伝道?」
健「そして、『1を省き』ってのは、偏と旁となる1/2である漢字、をマイナスへ逆転させ、普通に偏と旁として成り立っている漢字を0、つまりなくし、『2つ』である『学』の字を残し、再びつけ直すと?」
調「仁技体学。」
健「そして、『口』ってのを構として、中身を『寸』とすると?」
アレシア「仁技体学団!」
健「そうだ。国王は知ってやがったんだ。そしてそれを教えようとした矢先、殺された。国が編成した軍事集団ってなら、首を刈り取った後、消えるのなんざ簡単だ。ドアがゆっくり開いてる間に扉の陰に潜み、俺等が死体に驚いている間にそっと出ていくだけだろーからな。」
流「いかに難しそうな事件でも、蓋を開けてみれば、子供騙しの積み重ねね。」
聡「そしてこの暗号文は、万が一国王が殺されたときのバックアップだった、というわけか。」
健「あぁ。そのまま書きゃあ隠滅されてたけど、暗号にしてた上に、奴等が国王を殺した直後、俺等が入ってきた。暗号なんざ気にしてる暇はないし、気がつかなかったのかもしれない。」
優「『仁技体学団』の基地は?」
執事「存在しません。あくまで機密事項なので、民の眼に触れてはならないと。」
宰「じゃあ彼等は、どこに集まっていたのですか?」
執事「存じ上げません。ですがこの近くではないと思われます。」
調「何故?」
宰「王城のある町は、いわば首都。日本で言うならば東京。したがってその周りも栄える。栄えるということは、人口も増える。人がたくさんいるところにそんな軍事集団がいたんじゃ、目立ってしょうがない。更に言えば訓練に必要な土地などを確保できなくなってしまう。そう言うのは大抵、広大な土地のある田舎に作るもの。」
健「日本で言う自衛隊みたいなものならまだしも、『仁技体学団』はいわば日本で言う公安警察。存在や場所を悟られてならないのならば、尚更遠く離れた土地に集める筈だ。ここにはセキュリティ設備とかはないみたいだし、侵入を防ぐことができないからな。」
執事「でしたら、ここ『王城都市から300ヒュート(レッドガレスタの長さの最大単位。日本でいう10km。)程離れた場所が、いくつか。」
アレシア「口頭で説明するのも無駄だ。私が全て、案内しよう。」
執事「しかしアレシア様、あなたがいなければどうやって国を護れと─」
アレシア「次期国王に、父の遺志を汲み取ったこの男を推薦する!!!」
─と言って、アレシアは健の腕を掴み、まるでボクシングの勝者のように高く掲げた。
健「…え?」
純「やーっと放課後だねぇ。」
準「来たばっかの奴がそんなこと言ってどうすんだよ。」
純「それで、準君の家はどこ?」
準「家っつーか、寮なら、結構近めだけど。」
純「じゃあ、今日泊めてー。」
準「…はい?」
純「だから、今日の夜は、準君の部屋に泊めてよ。」
準「ぬわにをのたもうておられるのでござりませうか?」
純「…ダメ、かなぁ?」
超上目遣い。
超可愛い。
超泊めてあげたくなる。
準「いやいやいやいや、ダダダメだって!いくらなんでもそんな、ねぇ。」
純「だってぇー。」
今にも泣きそうな表情。
ヤベェ。
準「だ、だだ大体、なな何で、う、ウチなんかに?おおお前ならもも、もっと凄いい家が…」
純「それがイヤなの。」
準「へ?」




