拾伍章─残酷─
?「聞いてたな、お前等。」
ゾッとした。なにしろ顔が怖い。
若干太ってはいるが、まず腕の筋肉が服の上からでも分かるくらいに出来上がっている。
更にグラサン。そしてハゲ。ザ・怖い。
純「聞いてたけど、それが何か?」
準心の声『うぉーい!白山ァー!』
?「フン、まぁいい。お前に手を出すと、後々厄介だからな。」
そう言って、謎の男は去っていった。
アレシア「桜?誰だそれは。」
健「い、いやぁ。何でもない。」
アレシア「何の事だか、話せ。ここは王城の中であるぞ。私の命令は、絶対だ。」
健「おいおい…そんなことでいちいち、『命令』とか使ってんじゃねぇよ。」
アレシア「命令せねば、お前は話さない。そうであろう?」
健「命令されても、話さないけどな。」
アレシア「、なっ…」
執事「まぁまぁ軍神様、よいではありませんか。誰しも心の中に秘密は持っているものですよ。」
アレシア「…まぁよい。そういえば、この者達は?」
執事「勇者様でございますよ。御父上からお聞きになっておられませんか。」
アレシア「いや、聞いている。なかなか腕の立つ者共だとか。」
執事「─の割りには、武器の類を一つも見せないのではありますが。」
国王の部屋に到着した。
コンコン
執事「失礼致します。」
国王「うむ。入室を許可する。」
ガチャ
「な」
ザシュッ
健「今の音は!?」
ギイイイイイイ…
穏やかにドアが開き、健達が中に入ると─
国王の首が、刈り取られていた…
準「うんめぇー!」
純「でしょ?」
準「いつの間にこんなに料理上手に?」
純「準君は知らないと思うけど、私の家では15歳になると、花嫁修行が始まるのよ。女子限定だけどね。」
準「なぁるほど。それでこんなにうまく…」
純「それで、さっきの怖い人、誰だか知ってる?」
準「そうなんだよ。今考えると、どっかで会ったような気がしてならないんだけど…」
純「市長よ。第一舞奏市の。」
準「へ?」
純「第一舞奏市に入るとき、長ったらしい演説、聞いたでしょ?あの人よ、あの人。」
準「ああーーーーーー!」
純「私は転校したてだから覚えてるけど、準君は覚えてなかったみたいね。」
準「そういえば船の中でうたた寝してたかも。」
純「さっすが。」
準「ホメラレテルキガシナイノハキノセイカ。」
純「ウンキノセイ。」
準「だってしょうがないだろー、前の日ワクワクしすぎて、眠れなかったんだから。」
純「ホントしょうがない。転校してきてよかったー。」
準「ん?それとこれと、どう繋がるんだ?」
純「だってぇ。そんな性格な上、友達いなかったら、本格的に困るでしょう、準君。」
準「実は同じクラスで後援科だった吉田 涼って奴が転校して以来、本格的に困ってたところ。」
純「でしょー。これからはちゃあんと起こしてあげるから、感謝なさい。」
準「まだ寝てるって決まったわけじゃ─」
純「寝てるんでしょ。」
準「ハイスミマセン。」
純「ホントだらしない。さぁて食べ終わったことだし、午後の授業行きますか!ほら、早くしないと遅れちゃうわよ!」
健「こ、これは─」
アレシア「誰だ!父上を殺した者よ、今すぐ出てくれば罪は軽減される!だが出てこなければ─この聖武器たる聖槍、『グングニル』で刺し殺してしまわれよう!」
─アレシアの怒号とは反対に、部屋の中は静まりかえっていた。
まるでそこには、犯人など来ていなかったかのように。
閉められたままの窓が、不吉な予感を物語っていた─




