拾伍章─優しすぎるお嬢様─
篝「ホント、デートでも行ってるんですかねぇ。」
菫「噂だと、爆弾学科以外の全てのパワーウエポン科の生徒達が、行方をくらませたそうですが。」
一「あ、わかった!もしかして、この前行けなかったバカンス─てててて。」
菫「私のせいだと仰りたいのかしら?」
一は頬をつねられながら、
一「べ、別に、そんなこといってる訳じゃ─ってて!」
つねる力が強くなる。
菫「そうでなくとも、この私を差し置いて皆でバカンスなど、許される筈もありませんわ!」
篝「確かにー。私達も誘ってほしかったかもね。」
一「まだ決まった訳じゃ─」
菫「言い出したのは貴方でしょう。テンションの下がることを言わない!」
バチン。
気づくと一の頬は、真っ赤に染まっていた。
準「フラグ欲しーい。」
つい昨日、人生最大のフラグをへし折ったキモヲタの台詞。それも独り言だからさらに情けない。
ちなみにここは一年一組。
刀学科の二人が行方不明と言う話題で持ちきりな現在。だがあの気まぐれでミステリアスな戦闘科と、それに文句1つつけず着いていく後援科。あの二人のことだ、いつかはこうなると思っていた。
準はため息を吐き、ぐったりと机に伏した。
担任の城田 久美が、教室に入ってきて、一言。
城田「今日は転入生がいるぞー。喜べ、男共。美少女だぞー。」
その一言は、準を戦慄させた。
美少女。そして転入生。
これはフラグな気がする。
っていうかその前に、純粋な子であれば先に準に対して好印象を与えておけば、フラグを作れる。周りの目は怖いけど。
城田「入ってくれ。白山さん。」
その名前は、準をまたもや戦慄させた。
準「白…山…?」
入ってきたのは、準の中学時代の知り合いだった。
白山「本日転入してきた、白山 純です。よろしくお願いします。」
男子から歓声が響いた。
だが準は、ただ呆然とする。
白山 純。
いじめられていた準を、ただ一人庇い、相談に乗ってくれた、ヲタク的に言うなら幼馴染みのお姉さん、的な存在。(実際は幼馴染みではないが)
そんな彼女は、ブルースタインで有名なある会社の社長令嬢だった筈。
なせ、転校を?
つーか孤島に転校とか、もはやこの学校に来たかった、としか言いようがねーだろ。
それじゃ、ついに俺にもフラグが!?とか思ってたその時─
純「あら、準君じゃない。」
─フラグキター。
が、同時に、男共から殺意の籠った視線が。
まるで、「キモヲタ、調子乗ってんじゃねぇぞ。」的な。
ちなみに、彼女には人を下の名前で呼んでしまうという、妙な癖がある。が、同時に空気が読めない。
二組のナイフ戦闘科並に。
その上彼より裕福なため、頭は良くても常識を覚える能力、というかその気がまるでないらしい。
自分が将来頑張れば、常識なんかあっという間に変えられるから、というのが彼女の言い分らしいのだが。
だが礼儀作法は家の基本なため、その辺は彼よりしっかりしているわけだが。
そして男子の一人が立ち上がる。
男子A「ってめぇ、調子乗ってんじゃねぇぞ。キモヲタが!!!」
その一言に、白山の目が怒りに染まる。
純「キモヲタ…?あんたらねぇ!!!」
─ここから先は、彼女によると『聞いてはいけないゾーン』に突入する。
純「テメェ等!転入早々アタシを不快にさせてんじゃねェよ!準を寄ってたかって『キモヲタ』ァ!?っざけんじゃねェぞこのボケナスがァ!!!」
顔立ちは整っているし、礼儀作法できるし、頭もいいし、お嬢様だし、普段は超がつくほど人当たりのいい彼女だったが─
─怒ると、特に友達を侮辱されると見境というものが消滅する、超優しすぎるお嬢様、白山純であった。




