拾伍章─電話─
登校中─
純「ねぇねぇ準君、さっきから、何いじくってんの?」
準「ん?あぁ、何でもない。」
準は、今朝見たメモの番号をスマホのメモに書き、暗記した上で早速、その番号にかけてみる。
「ふぁい。」
電話に出たその声は、超眠そうだがそれでも分かるくらい、沈んでいた。
健は、眠かった。
健「ふぁい。」
沈んだ声で、そう答えるのが精一杯だった。
「あのぉ、何故こちらに、電話番号を残されていたのでいたのでしょうか?」
男の声だった。
言ってることはよくわからないが、怪しい。
健「はぁ?何言ってんだ、お前。」
「はぁ?何言ってんだ、お前。」
はぁ?と言いたいのはこっちだ。
だがここは、大人の駆け引き。そんなことはおくびにも出さない。
準「いやいや、そんなこと言われても、朝起きたら白山 純さんの自宅に、その電話番号が残されていたものですから。」
「知るかよ、間違い電話じゃねぇの。」
スマホの画面を確認してみる。
一応、写真も撮ったし、それも併せて確認する。
準「合ってます。白状してください。白山家に不法侵入したのは、あなたなんでしょう?」
健「不法侵入だぁ?んなことしてる暇、あるかっつーの。」
「ですがその番号がそこに─」
健「だからなんだよ。ここの番号知ってる誰かが、その白山さんって人の家に、書き残していったんじゃねぇの?あんた、刑事かなんかなのか?」
「それはお答えできません。個人情報流出の恐れがありますので。何しろ相手は空き巣ですからね。」
健「っテメェ、舐めた口利くのもいい加減に─」
「舐めてかかってるのはそっちです。どうやら白状してくれないようなので、警察に通報させていただきます。」
健「あぁ、勝手にしやがれ、間違い電話男!」
準「ったく、何なんだよ、あの空き巣野郎!」
純「何怒ってんのよ、敬語だった直後にその喋り方すると、変に聞こえるよ。」
準「しょうがないだろ。相手はまだ逮捕されてないんだし、いくつ年上かも分かんないし。」
学校に着いた。朝っぱらから既に変だが、今日も奇怪な一日が始まるのかと思うと、準はゲンナリした。
健「おはよーう。」
執事「おはようございます。今日は出発の日でございますね。お荷物は─」
健「大丈夫。たいしたモン持ってねぇし。」
執事「さようでございますか。しかしどうかなさいましたか、昨日と比べてひどく不機嫌な表情をされておりますが。」
健「そうそう、この近くに、白山って家、あんのか?」
バリン。
聡が驚きのあまり、皿を取り落とした。
健「知ってんのか?」
明「逆にお前、知らないのか?」
流「流石。」
宰「健様の常識の無さは、筋金入りですから。」
優「白山っつったらお前、あの世界的大企業の社長じゃねぇか。」
調「海運業を除けば、緒河家とは格の違う資産家です。」
健「そんなにスゲェのか?」
執事「はて、そんなもの、ありましたかな?」
アレシア「シロヤマなどという家の名は、聞いたことないが。」
聡「あっいや、山ですよ、山。『白山』っていう、勇者の間で伝わる、一種の神話で!」
調「『しさん』と言うのも、金の『資産』ではなく、死んだ火山という『死山』ということです。」
宰「もう噴火はしないんですが、何しろ道が険しいらしくて。」
優「ちょっと前までは結構伝わってたんだけど、噴火が止まってから危険度が下がって、珍しくもないからよっぽどの冒険者じゃない限り、」
明「わ、わわ忘れてるかと…」
アレシア「…フム、まぁよかろう。それより、ルートを決めよう。」
健「ルート?」
アレシア「そうだ。今日から始まる旅の旅路だ。」




