不意打ちってアリかも
「そうか妹よ。苦労したんだなぁ」
目が笑ってる。絶対バカにしてるよこいつ。
「そうそうだからはやくぅ」
「ホイ」
目に刺激がはしる。え?
「うぎゃあああああっ!」
目がっ目にっ! 薬液がああぁぁぁぁぁ‼︎
「どうだ? 気持ちいいか?」
「…………なんかスースーする」
それは今まで感じたことのない目の感覚。冷たいような、ジンジン温かいような……不思議な感覚。
「お前そんな初めてスカート履いたボーイッシュな女の子みたいなこと言うなよ」
「だからごめん、意味わからない」
「まあいいけどよ、それよりどうだ? 怖くなかったろ?」
「うーん、どうだろ。不意打ちのせいでよくわからなかった。ちょっと痛かった気がしたし」
「それは謝るが、もう一発さしたら慣れるだろ」
「ん? もう一発?」
なにそれ? エロいこと?
「お前の目はひとつしかついてないのかよ」
「へ? あ……っ!」
盲点だったわ。一回で終わりだと思ってた。目って二つあんじゃん⁉︎ 二回ささないと意味ないじゃん⁉︎
私ってほんとドジ……
「そんじゃあいくぞー」
「さあこいやあ!」
もう一発目、今度は不意打ちなどせず、普通にさしてもらう。ちなみに私の野球部みたいな掛け声は覚悟の表れ。女子力は捨てた。
「なあプルプルしないでくれる? やりにくいんだけど」
「それは無理な相談ね」
「なに堂々と情けないこと言ってんだよ」
「仕方ないじゃん! 怖いんだからさ! さっさとやってよ! もしくは代わって!」
「代われるもんなら代わってやりたいけど……膝枕的な意味で」
なぜこの人は毎回一言多いのだろう。
「やっぱりさ、不意打ちがいいよ。だから不意打ってよ」
「そう言われてもな〜、不意打ちする相手から『不意打ちして』って言われるとお前も意識するしやりにくいんだよ」
「さっきからやりにくい、やりにくいってばっかじゃん」
「だって本当じゃん」
「だったら寝てるときにさしてよ」
「寝てるときにさす……だと?」
むう、いっつも私はお兄ちゃんに対して墓穴を掘ってしまうのだ。
「何を〝さす〟とか言ってないよな?」
「逆にお兄ちゃんは何をさそうとしてるの?」
「そんなの言え…………じゃなくて目薬に決まってるだろ」
「だよね」
最初に出かかった言葉はとりあえずスルーしとく。
「で、どうする? 寝る? 寝れないなら睡眠薬持ってこようか?」
「やめてやめてお兄ちゃん。犯罪の匂いしかしないよ」
だめだこいつ、早くなんとかしないと。
「とう!」
「ぎゃああああぁぁぁ‼︎」
目がぁぁぁ‼︎ …………もう何をされたかはわかるよね。
「それにしてもお前の悲鳴、女の子があげちゃいけない声してるよな」
「く……っ、うっさいわ!」
若干涙目(目薬のせい)になりながらも威厳を保つために声を荒げる。威厳なんてあったけ? なんて言わないでね。
お読みくださりありがとうございました。
次で最後となります。