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この兄は私のことを異性として見てますか?

 上目づかいは男の人には効果は抜群だ。これがあれば働かなくても生きていける。あざとくなりすぎないようにやるのがコツで、それが結構難しい。

 それは兄妹でも言えることであった。

 ちなみに今はお兄ちゃんの部屋だ。

「仕方ないな〜、じゃあここに寝て」

 そう言ってお兄ちゃんが指差したのは自分の膝。つまりお兄ちゃんが膝枕してくれるらしい。うん、いらね。

「お兄ちゃん……それはちょっと……」

 私はやんわりと断ってみる。

「おいおい何言ってんだよ、目薬プレイは膝枕だろ?」

 お前が何言ってんだよ。

「お前が何言ってんだよ、変態」

 ありゃ、口が滑ってしまった。

「実の兄に向かって〝変態〟とは言うようになったな、妹よ」

「実の妹に向かって〝プレイ〟とか言わないでほしかったな、お兄ちゃん」

「…………」

「…………」

 お互いが台詞のカウンターを狙ってるため、初弾が出せない。

 そんな均衡を破ったのはストレートな猥語が持ち味、生粋のインファイターにして変態。お兄ちゃんだった。

「よく考えてくれ妹よ。いくら俺の身長がお前より高いからといって、海老反り状態のお前に目薬をさすのは至難の技だぞ。早く終わらせたいだろ? なら膝枕一択だ」

 ……確かに一理ある。

 さっさと終わらせて目薬とおさらばしたい。

 見事にジャブを食らってしまった。ストレートを警戒するとジャブが輝くんだよねぇ。

 将来の結婚相手はプロボクサー。それが私。

「……じゃあ膝枕で」

「よしきたっ」

 お兄ちゃんは勢いよく正座し、太ももをパチンと叩く。

 私は意を決して膝に頭を乗せて横たわる。

 下から見るお兄ちゃんの顔は……なんというか下心丸出しな顔に見える。ってあれぇ、後頭部に硬いモノ当たってね? 気のせいかな? 気のせいだよね?

 と、私が嫌悪感を丸出ししていると……

「気のせいだな」

「えっ……?」

 この人、私の心を……!

「お前の表情見ればわかる。今のお前、コートの下に何も着てないおっさんにいきなり恥部を見させられたような表情してるぞ」

「……ごめん、意味わからない」

 なんでそんな例え下手なの? だから低学歴だっていってんじゃん。

「……そうか……例え、悪かったな」

 なんかちょっとシュンとしてるし、ていうか後頭部に当たってたモノの感触もしなくなってる。シュンとしちゃった? …………あれ、お兄ちゃんの変態って感染する? 私なんかすごく……アレなこと言っちゃったね……しゅん。

「じゃなくてっ、…………さっさと目薬さしてよ」

 そう急かすとお兄ちゃんは何事もなかったかのような振る舞いを見せ、「じゃあ、さすぞー」と言ってくる。

 やっとこの時がきた。

 ここまでくるのにどれだけかかったか……

「うん、早く」

 私も素直に受け入れる。

「入ったときはちょっと痛いかも知らないけど、すぐに気持ちよくなる」

「うん、大丈夫。もう覚悟は決めてるから……」

 私はぎゅっとスカートの裾を掴む。

「…………なんか背徳的な気分になってきた」

「ぶっ飛ばすぞ…………じゃなくてもういいから、もうつっこまないから。早くしてよ〜」

「今つっこむどころかぶっ飛ばそうとしたよね⁉︎」

「はいはいごめんなさいお兄ちゃん、わたし必死なの」

 切実な声でお兄ちゃんに心情を伝える。

 私は目薬が怖いってことも含めて全部。


お読みくださりありがとうございました。

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