白雪姫2
校門には、一人の少女がいた。
腰まで届きそうな、長い黒檀色の髪が、夕陽に照らされて艶めいている。雪のように白い肌と、シャープな顎先から伸びる細い首もとからは、彼女の華奢なところが伺える。
振り返り、こちらを見つめる紅の瞳はまるで――
「こら!なにジロジロみてんのよ!殺すわよ?」
殺人鬼の目だった。
この鋭い眼光の少女は俺の幼馴染みの竜田揚 茜。とっても美味しそうな名前ですが、食べられません。
一つ大事なことを忘れていた。
先ほど、恰も彼女が巨乳であるかのような発言をしてしまったが、あれは単なる比喩で、実際のところ巨乳というより美乳だ。
僕の手のひらにギリギリ収まりそうなそれは、まさにお手頃サイズ。
Cカップといったところだろうか。
「何みてんのよって言ってんでしょーが。日本語分かる?よかったら私が教えてあげましょーか?」
「……。すいません。」
そろそろ本気でヤバそうなので、茜の話はこのくらいにして、僕の話をしよう。
僕の名前は、春夏秋冬 秋。
僕の話をしよう。といった訳だが、それと言って目だったところもない、極普通の高校生だ。
無理やり変わっていることを挙げようとするならば、この一部だけ色の違うアホ毛だろうか。基本、僕の髪は黒っぽい茶色な普通の色をしているわけだが、どういうわけだか、この一部だけ色素が抜けている。
どうしてこんなことになっているかは不明だが、チャームポイントとして受け取って頂けるとありがたい。
さて、このまま話をしていたらきりがないので、その他のことは後々話すことにしよう。
「あのさー。アッキー私のことどう思ってる?
」
「どう思ってる?っていきなりどうしたんだよ」
「ごめん。何でもない。今の忘れて。」
そう言った茜の顔はどこか寂しげで、何か言いたそうな顔をしていた。
「私、用事思い出したから、先に帰ってて」
「ああ、じゃあまた明日な」
「うん。また明日……」
最後茜は、言葉を少し詰まらせた。この時僕はきずいてもよかった筈だった。きずくべきだった。
「アッキー!私はあなたのこと嫌いじゃないわよ」
「うっせ」
彼女の後ろ姿は、夕凪を舞う赤トンボのように美しく、そして切なかった――