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守護者  作者:
メッセンジャー
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良心の交代


ムーア大佐が憲兵隊長室で箱詰め作業をしている。

リン中佐はムーア大佐の後任として憲兵隊長になる事がきまっているので、引継ぎを兼ねてムーア大佐の引越し作業を手伝っている、リン中佐は実戦に出てない士官だが前任者のレスター司令と、今度のムーア大佐に仕えた事で真実を見極める専門家としてムーア大佐の跡を継ぐことになった。


「ここも寂しくなりますわね」


「君のケツが拝めなくなるのが残念だよ」


「賞味期限切れですってば」


「いやいや、その齢でそのケツは奇跡と言っていい、その幸運は大事にしたほうがいい」


事もなげにセクハラ発言をするこのムーア大佐は彼女にとっていい意味で思い入れのある上司だった。

彼女は結婚で一度予備役となって復帰してからの9年間をムーア大佐に仕えていた。


憲兵部では調査官と審議官がおり、事件の大筋と処理内容を調査官が調べて決定を下すのが審議官である。

リン中佐は憲兵隊一筋で調査官として人を調べる事、人を見る目に自信があった、彼女が作ってきた資料は士官人事の対象となる人物評価のデータベースとして生きている。


彼女は一度だけ調査のミスを犯した、昔調べた人物の証言信用を今も変わらないと思い込んでの失敗は誤審を招いた事があった。

ムーアはリン中佐を信じて決済し、間違いが判ってからその責任を認めて自ら降格処分をする事で責務を果たした。


ムーア大佐は憲兵隊の要とも言うべき、隊員達の人物評価データベースの「事実でないデータを見分ける達人」だった。

彼は安易なデータ、故意のデータは自身の経験と先達の知恵の両方で見分けていたが、この時のミスだけは


「データとは信用のある人間の眼が作る物」


と言う考えの下で決済した。

言葉だけで自己正当化を図る人間を多く見て来たリン中佐にとってムーア大佐とは行動で以って正当化を体現した人物だった。



「幸運と言えば、Felix(幸運)の子はどうされるんですか?」


審議官としてリックの件に目を留めたのが彼女だったのでムーアに聞いてみた。

ムーア大佐が指揮する事になった第16艦隊にランダース中尉を手元に引き入れた事に対してリン中佐は個人的に興味があったのだ。


「どうもこうもいつも通りさ、判って対処できる範囲なら手を打つ、

 飛び跳ねそうな奴には鈴をつける、奴の泣き所は女房から聞いてるさ」


「世話になった女性には弱いですか?」


リン中佐はリックの事をあらかた調べ抜いてる、「フェリクス(幸運)」の異名を持つランダース中佐の忘れ形見であり、絵に描いたようなカンプグルッペの士官で扱いが難かしいと見ていた、能力の高い人間程しでかす失敗も大きいのは彼女の経験則から来る杞憂だ。


「あいつに限った事ではないが能力のある奴には必ず誰かそれを見守って助言を与える人間が必要だ、

 ただ同じ場所にいるだけでもそれがストッパーになる、マイスターと言えど短所を補ってやるのも組織の寛容って奴さ。」

 

少し考えに入ったムーア准将は溜息をつくように


 「もっともそんな公平な目で見れる人材が少ないのが現状なんだがな、

  さてと、こんなもんかな」


箱詰め作業を終えたムーア大佐はリン中佐に向かい合って言う。


「後は頼んだぜ、ここがハイガードの最後の砦だからな」


組織の体質管理が企業で言う監査や人事部ならばハイガードでは憲兵隊がそれに当たる、ムーア大佐は前任者だったレスター司令に言われた言葉を使って引継ぎの完了とした。


「頑張りますけど、迷った時にはお願いしますね」


「勿論さ、いつでも来い」



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