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守護者  作者:
メッセンジャー
30/88

アテナとアルテミス



ブリーフィング終了後に別室にてテーブルを挟んでカーライル大尉とムーア少佐が対面している、脇にムーア准将とフォレスト中佐が座っている。


「敵の狙いは誘拐です、開拓記念パーティの前に確保すべきです」


カーライル大尉の言葉に対して情報部のムーア少佐が反論する。


「彼等の手口からして自爆もしくは爆破のスイッチをもっている事は間違いないでしょう。

 可能な限りメンバーを特定するまで時間が必要です」


親友であるはずのこの二人が対峙しているのはテロリスト逮捕のタイミングで見解が別れていた。

「QEⅢ」での作戦指揮官としてのカーライル大尉はテロリスト達の先制攻撃させる事に最初から反対していた、ムーア少佐は公海域に「QEⅢ」が辿り着く前に船の爆破で足が止まる事を恐れ、ギリギリまで敵の特定をして一網打尽を主張していた。


太陽系からのジャンプポイント完了後から二日後に「QEⅢ」船内でニューエセックス開拓記念を祝って盛大にパーティが催される、その時にニューエセックス解放軍が事を起こすのは間違いない事をムーア少佐は掴んでいる。

カーライル大尉は言う。


「パーティ会場の狙撃ポイントは三箇所と限られます、突入で制圧は可能ですが被害が必ず出ます」


「シージャックを宣言させる事で敵の人数判別が必要です、

 未確認のテロリストで船の爆破をされると敵の官憲を船に乱入させる口実になります」


ムーア少佐はテロ排除後の敵の臨検を装ったエリザベスの拘束を恐れている。カーライル大尉は絶対的な戦力を持っているのにリックをテロリストの生贄にする事に納得がいかない。1個連隊までなら手持ちの戦力での撃退に自信があるからだ、地と人の利はこちらにある。


ムーア少佐はカーライル大尉の心情をよく知ってはいても、国連側の手にエリザベス嬢が渡って開戦となった場合、戦局が左右される事を知っている、相手が親友と言えども引く訳にはいかない。


フォレスト中佐は二人の話を冷静に聞いていた、パーティ開催の日程だとその日は国連側の勢力圏だ。

突入のタイミングが遅ければ遅いほど、公海域へのジャンプポイントまで距離が短くなる、ジャンプしてしまえばそこはハイガード軍の介入が可能だ。

テロリスト確保が早すぎると、国連側の艦船に補足される可能性が大だ、テロリスト確保は早すぎてもいけないが遅すぎてもリックとエリザベスの身は保障できない。

ムーア准将の言葉を待っている二人に対してフォレスト中佐が口を開いた。


「地球出航から公海域へのジャンプポイントは4日の行程です、パーティを一日ずらしましょう、

 突入のタイミングはエリザベス嬢がパーティに出席する直前がよいかと思われます」


ムーア准将は最初から国連側の領海内で事が起こった時の艦隊運用の口実を模索していた、准将内定の時から考えてはいたがレスター司令に打ち明けたこの手が上手くいくか半信半疑だった。

敵の指揮官が愚かなら事態は最悪になるからだ。

ムーア准将はエリザベス嬢を保護の為に開戦のきっかけを与える事も辞さない覚悟であることは第16艦隊司令を受けた時にレスター司令から諒解を得て定まっていた。


「フォレスト中佐の案でやろう、しかし突入のタイミングはカーライル大尉でいく

 少佐主導でエンジンブロック周辺の爆発物探査を、カーマイクル達がいいな、あれは爆破の専門家だからな、

 それと可能な限り人員とモニター機材をQEⅢに投入してくれ」


作戦運用の決済をしたムーア夫妻は提督室で休憩をしている。


「すまんな、貧乏くじ引かせて」


「あら、何の事かしら?」


夫にコーヒーを入れているムーア少佐。


「問題点を探すには最悪から想定しなきゃならないからな、いいシミュレーションになったよ」

「実際はそこまでいかないと思うわ、既にテロリストの8名はマーク始まってるし、後は芋づるよ」


彼女は既に「QEⅢ」での見張りとテロリストのマークが同時進行中であることを知っている。

テロ決行日を知ったのも追跡調査の盗聴で判明した事だった、素人の仕掛ける側は自分達が見張られている事を知る手段がない。


「これもあの子のお陰ね、モンタージュ写真はバッチリだったわ」


ウエイ・リー少年の事だった、彼の記憶力は技官も驚くほどに細密に特徴を覚えていた。


「17歳だっけ?あの年齢で取引なんてよく思いつくもんだな」


「弟一人に妹二人ですって、相当酷い生活環境だったみたいよ、

 両親は4年前からいなくて彼一人で養ってるみたい」


生きるために手段を選ばない生活をしてきたのだろう、ウエイ・リー兄弟の惨状は国連側の人々の経済状態そのものだと想像したムーア准将は作戦後のウエイ・リー兄弟達の事を思った。


「引き取り工作は大丈夫かな?」


「船の出港と同時にされるし、彼の手紙をもたせてあるから問題なく行けると思うわ」


作戦が実行されたら情報漏洩の疑いが掛かるのは明白なので、ウエイ・リーの兄弟達をハイガードの勢力圏に引越しさせるのである。


「リックはどう?うまくやれそうかしら?」


「問題ないだろ、咄嗟にキム大尉をぶっ飛ばす判断をしたんだから、偶発だったんだろ?あれ」


「そうよ、だってキム大尉が後をつけてきたんだから、リックの及ぶところじゃないわ」


ムーア准将は笑いながらも気になった、もしリックが誘っていたんだったら悪魔だなと、ランダース中佐ならやりかねないし、あの人の息子だから有り得ると思っている。


「あとは敵さん次第だが、こっちも足跡見られないようにしておいてくれよ、警戒されるとつらい」


勿論よとばかりにポーズをとるアミー・ムーア少佐。



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