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守護者  作者:
メッセンジャー
2/88

営倉


AD2398 ブラウラント星系 ヴォルフスシャンツェ


ハイガードの根拠地であるヴォルフスシャンツェの酒場の入口で言い争う男女の姿があった。


「どうした、今日は口紅をつけないのか?」


その言葉は彼女には禁句だった、フィンケ伍長はその言葉を吐いた男に飛び掛かった。

フィンケ伍長は女性とはいえ男性兵士と変わらない体格で白兵戦闘の名手だが、彼女の拳が男の顔面に届く前に別の拳が男の顎にヒットした。


フィンケ伍長より先に殴った若い男は階級章にまだ真新しい大尉の階級章が付いており、殴られた男も大尉の階級章をつけていた、しかしその階級章は年季の入った地金の見える階級章だった。


「大尉・・・」


呆気にとられたフィンケ伍長は自分の上官を見つめていた。


「飲み直すぞ、アデーレ、暫く飲みにいけなくなるからな」


若い大尉は笑いながらフィンケ伍長の肩を軽く叩いて行く。

殴られた男は失神したようで動かなかった。




ベッドに天井を見つめたまま考え事をしている男がいる

彼の名はリック・ランダース、彼は大尉に戦功昇進していたが乱闘罪で降格され、二週間の独房入りを命じられていた。


「ランダース中尉、時間です」


刑務兵の出所の報せにリックは両足を上げ反動をつけてベッドから浮いた。6フィートを超える体が静かに着地する、その身軽な体はカンプグルッペ(装甲兵)として訓練で鍛え上げられたものだ。


0G戦闘が多いとは言え、強襲をかけた船内で総重量20キロを超える装備で走り回る、体力の維持に毎日10Kのランニングが必要だ。

二週間の狭い独房生活でリックはひたすら体力維持のための運動に時間を費やしていた、それが生き残る必須条件だと知っているからだ。


二重の鉄格子部屋を抜けてドアを開けたリックは驚いた、そこにフォレスト少佐が立っていたからだ。

彼女はリックの任官時の直属の上司だった、去年「バウンティ」号の副長としてリックの乗っていた「バンガード」から離れた。


「久しぶりね、これから私と一緒に司令部の306号室に出頭しなさい。」


フォレスト少佐は微笑みながら


「レスター司令からの伝言よ、この手はもう使えませんよですって。」


「イエス・サー」


彼女にしては珍しく笑うその姿に周囲にいる憲兵隊員達も笑って眺めている、おそらく事情を知っているのだろう。

白面銀髪の容姿と冷静沈着さから「アイス・ドール」と囁かれる、彼女は滅多に笑わないが親しい者に時折みせる笑顔はリックにとって嬉しさのある反面そこには犯すべかざる神聖さを感じていた。


階級だけでは従わないふてぶてしさのあるリックだが、彼女に対してはルーキー時代、世話になっているだけに頭が上がらない。

今回の事件を知られたとなるとバツの悪さが一層だ。


司令部の三階は配属辞令や補給関係の部屋だ、廊下を歩きながらどこに飛ばされるやらと思いを巡らすリックだが、すぐに変だなと気がついた。

まだ処分完了書類を受けてないのに配属辞令を言い渡す306号室へ向かう、しかもなぜ別の艦のフォレスト少佐が迎えに来るのか。


憲兵本部の建物を出ると左右にリックの小隊の面々が整列していた。

右最前列のサカキ軍曹が吼える。


「フォレスト少佐と小隊長殿に敬礼!」


24の踵が鳴る。


「お勤め、御苦労様です」


ニヤッと笑うサカキ軍曹に対しリックは苦笑いと敬礼で返す。分隊任官時からの付き合いだ、リックより年長だが最も頼りにする男だ。

リックの小隊には少尉がいない、既に他の小隊編成のために引き抜かれて分隊長はサカキ軍曹やフィンケ伍長がなっている。

それぞれの想いを顔に出して迎える小隊員達。


「制帽をお持ちしました」

「有難う、伍長」


フィンケ伍長から手渡された帽子には青地をベースにした隊章と「マイスター」徽章がついている。

処分完了届けを持たず今被っていいものなのかと迷った瞬間にフォレスト少佐の声が飛ぶ。


「帽子を被りなさい、いきましょう」



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