二日目(5)
俺たちはその後も他愛のない会話をしながら、最後まで花火をみていた。花火が終わると、二人であたりを軽く片づけてから帰ることにした。自転車は凪子の家に停めてきたので、凪子の家までは一緒に歩いてくことになる。暗い夜道を二人で怪談を話しながら帰ったのは、最高に面白くて、ついつい回り道をしたりもした。
しかし、そんな楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい、とうとう凪子の家に到着してしまった。
「着いちゃったね」
「うん、じゃあ、またな」
「あっ」
凪子が呼びとめるような格好をしたので、俺は自転車にまたがろうとするのをやめた。
「なんだよ」
「あっ、えーっと……あの……」
凪子は明後日の方向を向いて、もじもじと考えるようなしぐさをする。何を考えているのだろうか。
「早くしろよ。いいかげんにしないとホント母さんに怒られるし」
「いや、えっと、えーっと。……あ、そうだ! 麦茶!」
「麦茶?」
「バスケットの中に麦茶用意してたでしょ。せっかくだから飲んで!」
「はあ……まあ、いいけど」
凪子は素早い動作でバスケットから大きな水筒を持ちだし、水筒のふたに麦茶をそそいで、俺に差し出す。俺はそれを、時間もないので一気に飲み干した。凪子はというと、その様子をなんだか妙に真剣に観察していた。
「どうも、うまかった。じゃあな」
「えっ」
俺はそれだけ言って、さっさと自転車にまたがって走りだしてしまった。そんな俺の背中に、凪子の声が浴びせられる。
「修一!明日も、明日も遊べるよねー?」
俺は片手でガッツポーズを作って、凪子にサインを送った。
「じゃあまた、また明日、おんなじくらいの時間にね!絶対来てね!」
凪子の大声が住宅街に木霊する。ちらと後ろを振り返ってみると、凪子は両手を必死そうにぶんぶんと俺に向けて振っていた。俺は凪子のそんな姿に噴き出しそうになったが、かわいそうなので我慢する。
明日も楽しい一日になりそうだ。