「君に会えるのなら、全ての色を消そう」
恋をした。
女の子のように綺麗な男の子。
初めて「美少年」という言葉を覚えた日。
遠い国に住んでいる。
私と違う言葉を話す。
彼が見る景色を私が見ることがないように、
彼もまた私が見ている景色を見ることはない。
こうして私が小学校への長い道を歩いている時、
あの男の子は何をしているのだろう。
両親がいて、先生がいて、友達がいて、
それから、好きな女の子もいるのかな。
お小遣いを小さなお財布に入れて、
あの日、あの男の子と出会った映画館に向かった。
もう一度、あの男の子に会いたい。
チケット売り場。
あの男の子に会えるのは今日までなのに、
持ってきたお金ではチケットの値段には届かなかった。
大きな映画のポスター。
私はそれを少し離れたところから見つめていた。
もう会えない、もう会えない。
悲しくて、淋しくて、一歩も動けずに閉館の時間まで立ち尽くした。
男の子の顔が段々ぼやけていく。
さっきまで、くっきり思い描くことが出来たのに、どんどん消えていく。
新しい記憶が書き込まれて、どんどん消えていく。
消えないで、目を閉じて何も見なければ、また会えるよね?