未読の未来
掲載日:2026/06/03
朝起きると、スマホに一件の通知が来ていた。
差出人は、自分だった。
件名は「今日の夕方、傘を持って行け」。
いたずらかと思ったが、差出人のアドレスは確かに自分のものだった。本文にはそれ以上、何も書かれていない。
空は快晴だった。天気予報も降水確率は十パーセント。けれど、なぜか気になって、僕は折りたたみ傘を鞄に入れた。
夕方、大学を出ると、突然雨が降り出した。
僕は少し怖くなった。
翌朝、また通知が来た。
「今日、右の道を行くな」
その日、いつもの帰り道で工事中の足場が崩れたとニュースになった。僕は左の道を通っていた。
それから毎朝、自分からメールが届くようになった。
「財布を忘れるな」
「その人に返信するな」
「今日は謝れ」
どれも正しかった。
ある朝、メールにはこう書かれていた。
「明日から、メールを信じるな」
僕はしばらく画面を見つめた。
翌朝、メールが届いた。
「今日は絶対に家を出るな」
僕は迷った。
そして、スマホの電源を切った。
外は、快晴だった。




