核廃絶なんか理想論!? 核武装こそコスパ最強!??
令和七年(二〇二五)八月六日に執行された被爆八十年広島平和記念式典での湯崎英彦広島県知事のスピーチが話題になった。
湯崎知事は、力の均衡による抑止が幾度も破られてきた人類の歴史を看破し、抑止の概念をフィクションと断じた。
さらに核兵器配備後においても核使用の寸前まで至った事実を指摘したうえで、抑止は破られうるものであり、復興の土台すら滅ぼしかねない核兵器はやはり廃絶されるべきであるとした。
平和論者が陥りがちだった
「紛争抑止も核廃絶も」
という理想論を排し
「抑止は不可能。したがって核兵器は廃絶されなければならない」
と説いたわけである。
現に起こっている、または将来起こるであろう紛争の抑止など不可能と断じ、その存在を前提としたうえで、だからこそ核廃絶は益があると説いた、現実的かつ画期的なスピーチといえよう。
一方、この直前に行われた第二十七回参議院議員選挙では
「核武装は安上がり」
と主張する候補者が当選し物議を醸した。
いま日本が核武装しようと思えば、核拡散防止条約から脱退しなければならない。そのような選択をした国々(たとえばイラン、北朝鮮など)が、各国から厳しい経済制裁を課され、これを解除しようと外交交渉に大変なマンパワーを費やしている現実を直視すれば、安直に「安上がり」などとは言えないはずなのだが……。
少し前までは、核廃絶は理想論とされがちであった。世事に疎い理想論者という意味では、核武装論者のほうが当たっている。




