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終戦記念日特別寄稿!! 特攻、賛美から検証へ

 とある書籍に掲載されていたコラムである。実話かどうかは知らない。

 

 人質立て籠もり事件が発生し、人質の身に危険が迫っていると判断した捜査幹部は、男性ベテラン刑事に身替わりになるよう命令した。

 しかしベテラン刑事は、自分には妻子があるのでいま死ぬわけにはいかないとこれを断った。

 捜査幹部は仕方なく、若い女性刑事に身替わりを命じた。彼女はこれを引き受けた。

 実際には犯人側が拒否して人質交換は行われなかったが……という内容である。


 コラムはベテラン刑事の臆病をなじり、女性刑事の勇気を賛美して締めくくられている。


 胸クソの悪いコラムである。


 この話における最大の臆病者は、人質交換の必要性を認めながら自分はこれを回避し、立場の弱い者に危険な任務を押しつけた捜査幹部である。

 しかしコラム氏はその点について一切言及せず、断った男性ベテラン刑事にあえて照準を合わせ、臆病者と難じるのである。


 これでは特攻と同じだ。

 特攻の現場では、その必要性を提唱した者は自身を安全地帯に置き、過酷な任務は順次立場の弱い者へと押しつけられていった。


 特攻の提唱者や推進者に対する歴史の審判は、特攻隊員に対する称揚ほど十分には行われていない。

 この話になれば、必ずといっていいほど特攻隊員の勇気と敢闘を賛美する内容になってしまい、発案者等に対する公正な歴史の審判が妨げられるからである。

 

 戦後も八十年となった。そろそろここらあたりで歴史を一歩すすめよう。メディアのたれ流すがまま、特攻をお涙頂戴の感動物語として消費する段階はもう終わった。


 特攻のような命令を下せば後世めちゃくちゃ批判されるということ。

 したがって、どんなえらい立場の人間であっても、そんな命令を下そうとは金輪際思えなくなる、そんな世の中にすること。

 

 これこそが、特攻隊員の犠牲に報いる唯一の方法だと考える次第である。

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