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34 事件はどの様に終息するのか

 内務卿コルベールとの会見で、モンテスパンは己にモンボワザン逮捕の影響が及ばない事を彼から示唆され、安堵すると共にモンボワザンの子供達の口封じとフォンタンジュ公爵夫人の暗殺に取り掛かった。


 手始めに、彼女はバンセンヌの牢獄に収監されているモンボワザンの子供達への接触を図ろうと、クロードを使って獄吏の買収を図った。しかし、コルベールからレニエ警視総監へ、如何なる者であろうと、容疑者との接見を認めないとの通達が出され、獄吏の買収には成功したものゝ、密かな接見は出来なかった。金だけ取られ、体よく「接見は上からの命令で出来ない」と断られたのだ。


 それではフォンタンジュ公爵夫人の暗殺は成功したのだろうか? 結論から言うと、こちらも失敗している。

 フォンタンジュ公爵夫人は、この当時妊娠していた。何等かのストレスがあったのであろうか、不幸にも死産という記録が残っている。その後、彼女はベルサイユを退去して修道院に入り、1682年に死去した。

 この一連の流れから、世間ではモンテスパン侯爵夫人がフォンタンジュ公爵夫人の出産を阻止して、宮廷から追い出し、彼女の毒殺にも成功したと噂した。結果的にライバルの追い落としに成功したのだが、その他の毒殺事件への関与を疑われ、その美貌の衰えとも相まって、ルイの寵愛を完全に失ってしまった。


 モンボワザンは最期迄夫人との関わりについて、占いと生理用薬剤の提供だけであり、毒物販売や毒殺依頼は否定して火刑を受け入れた。

 彼女の子供はどうであったのか。何と、モンテスパンからフォンタンジュ公爵夫人の暗殺依頼だけではなく、ルイ14世の暗殺依頼も受けた、と自白したのだ。この自白内容を高等法院は矛盾に満ちたものであり、証言内容を立証する証人もおらず、日時も明瞭でないとした。結果、審理の進行を阻害する目的で自白したものであると断じたが、後日別件で証言した者から、国王の暗殺計画が明かされた。


 複数の国王暗殺計画が明るみに出た為、高等法院は警察庁が逮捕した毒物密売事件関係者からの証言の真偽を確かめるべく、容疑者と証言者の対質を実施した。


 ルイは裁判の進行を気にしており、宮廷関係者の出廷を渋った。否、彼のお気に入りの出廷を渋ったのだ。彼の治世への批判とも解釈される判決は避けなければならない。その為にも親しい者の出廷、有罪判決は避けたい。

 彼は意外な行動に出た。オランプ・マンシーニことソワソン伯爵夫人が、毒殺事件に関与している事が明らかになった時点で、容疑者としての夫人にフランスからの出国を勧めたのだ。かつての愛人への惜別の念が如何であったのか分からないが、ルイは容疑者逮捕に対する猶予時間を彼女に与えた。捜索に動く警察庁を一時的にせよ、停止させたのだ。

 彼女以外にも幾人かは、国王からの情けを受けた。しかしその数はそれ程多くはなく、大多数の貴族やブルジョワは高等法院に出廷して、軽くない刑を受けた。その後、国王からの減刑を受けて、宮廷生活に戻るのであった。



 国王暗殺計画について見てみよう。これは複数の計画が明るみになり、一つはモンテスパン侯爵夫人の計画、一つは某貴族グループの計画、そして獄中の身となっているフーケ元財務卿シンパによる計画であった。

 コルベール内務卿は、後者2グループの計画に加担した者全ての逮捕を厳命した。特にフーケシンパによる計画には、ルヴォワ陸軍卿もコルベールと連携して捜査に加わっていた。加えて言うなれば、コルベール暗殺計画もあったとされている。

 陸軍卿ルヴォワの調べでは、元財務卿二コラ・フーケの親族である某貴族が、魔法使いを使って国王及びコルベール暗殺の為、呪詛及び毒物投与を実行、計画したと言うものである。この件で、ルヴォワは関係者となったコルベールに替わって捜査を指揮した。

 困難な捜査であったが、彼は犯人を特定した。魔法使いへの報酬が莫大であったが故に、大貴族及びブルジョワを想定した捜査が実を結び、シュバリエ、ラ・ブロスなる人物に辿り着いたのだ。

 そして憲兵隊を逮捕に差し向けようとしたが、それを彼は取り止めた。何故か? コルベールへの牽制の為か。それともコルベール暗殺に期待したのか。


 元財務卿二コラ・フーケは、1680年に15年間の投獄生活から解放される事なく死去した。その数年前にラ・ブロス士爵も死んでおり、捜査は中止されたのだ。


 ついでに言うなれば、リュクサンブール元帥に関する裁判であるが、この裁判にはコルベールの関与が噂されている。フランス陸軍の英雄である元帥の影響力は絶大であり、陸軍卿ルヴォワであろうと、大法官ル・テリエであろうと、彼の陸軍に於いての地位に手を加える事は出来なかった。

 コルベールは陸軍でのルヴォワ派の権力拡大を阻止する駒として、元帥の影響力に期待したのだろう。その為、元帥の意見開陳を阻止しなかった。そして、元帥は高等法院を納得させて無罪を勝ち取った事は、既に触れた処ではある。


 次回作が最終話となります。

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