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俺の時代が来た。他力本願卒業の時。

「宗一郎さんがそう言ってくれて良かったぁ」

 メイが安心したようにほっと息をついた。

 余程困っていたのだろう、俺なんかでもできる事なら何でもしてあげたいと思う。

「みんな!安心して!これで私達の村は救われるわよ!」

 メイが家の外に向けて大声でそう告げた。

 その瞬間家の窓や玄関から大勢の悪魔達がぞろぞろと顔を覗かせて来た。

 子供から老人、男女と様々な年齢性別の悪魔達が何十人もいた。

 メイとガドロフの姿しか見ていなかったが、そういえばここは悪魔の住む村だったな。

 そりゃあ大勢の悪魔が住んでなくてはおかしいというものだ。

 ぞろぞろと現れた悪霊達がざわざわと、そして嬉しそうに喜びあっていた。

 良かった良かった。みんながこうして喜んでいるなら。

「それで悪魔族のみなさんは何に困っているんですか?」

「うん?あぁそれを説明してませんでしたね。実はこの近くには不死族のいう種族が住んでいるんです。その不死族が最近この村の悪魔を襲うようになるようになって、、、。」

「え、その〜不死族?は何で悪魔族を襲うようになったんですか?」

「ここからは代わりに村長のワシが話そう」

 そう言い出した村長が杖をついて立ち上がる。

「実は数年前から地殻変動により近くを流れていた川が流れなくなったのだ。野菜や果物、家畜が上手く育たなくなって、この辺一帯の地域が食料難になってしまったのだ。そのせいで種族間での食料の取り合いが始まってしまい、この有様じゃ」

 確かに前いた世界でも遥昔は川の近くに大きな文明が出来てたって社会の先生が言ってたな。

 でもそんな事で争いが起きるなんて間違ってる。

「何とか、、、何とかならないのかよジジイ!」

 思わず立ち上がって、手と言葉に力が入ってしまう。

 そんな俺を見て、悲しげな表情と共に小さな窓から晴れ渡った空を見上げた。

「何ともならないんだよ。せめてワシがもう少し若かったら何とかなったかもしれんがのぉ」

「いや、それは無いだろ」

「やっぱりお前は失敗じゃ!」

 ガドロフが俺目掛けて杖をぶんぶん振り回しながら襲いかかって来た。

 そんなガドロフを若い男の悪魔が背中から体を押さえた。

「離せヨードル!この男は一回痛い目に合わせる必要があるのじゃ!」

「ダ、ダメだよ。暴力は良くないよお爺ちゃん」

 現れたのは高齢になったガドロフと同じくらいの背格好で、腕や脚もヒョロヒョロの青年。正直戦ったら簡単に勝てそうな気がする。

 表情も何だか弱々しく頼りなさげで、争いとは無縁の生き物って感じがする。

 ガドロフをお爺ちゃんって呼んでいたって事は、このヨードルという悪魔はガドロフの孫なのだろう。

「黙らんかヨードル!お前がウジウジして頼りにならないから、ワシが出るしか無いと言っているのだ!」

「そ、そんな事言われても、、、。僕、争いとか好きじゃ無いし」

 このヨードルとかいう奴は本当にジジイの孫なのだろうか?

 この弱気な性格といい頼りない感じといい全くの他人な気がするのだが。

 ジジイの説教の目標が俺からヨードルに移り変わった所でメイが、まぁまぁとなだめながら割って入って来た。

「でも召喚の儀式で宗一郎さんが来てくれたわけだし、もう大丈夫だよ。ね?宗一郎さん。不死族なんかみんなまとめてやっつけてくれるんだから。頼りにしていますね宗一郎さん」

 メイが俺に向かって飛びっきりの笑顔を振り向けてウインクした。

 あれ?でも待てよ。

 不死族とかいう種族を俺はどうやってやっつければ良いのだろうか?

 というかそもそも俺は自分の力でそんな大層な事を成し遂げた事があるのだろうか、、、。

 これはもう逃げるしか無いのでは、、、。

 そんな疑問が頭の中をぐるぐると駆け巡っているその瞬間。

 一人の青年が悪魔達の間を押し退けて慌てて飛び出して来た。

 息を切らしながら両手を膝について、呼吸を整えている。

 嫌な予感だ。

「このタイミングでその入り方は、、、まさか!やめろ!」

「大変だ!不死族の奴等が村の!村の目の前までやって来やがった!門番の奴らも何人かやられて!」

 嘘だろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

 何だよこのあまりにもベタすぎる展開。

 まるでどこかの異世界転生最強系主人公のライトノベルじゃないか。

 うん?いや待てよ。今の俺って、村がピンチになったから悪魔族の秘伝の儀式で召喚された者、つまり異世界転生、、、。

 と言う事は伝説の魔法とかを使えたりするんじゃないか?

「俺の時代来たぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 勝利の雄叫びと共に両手を古びたお家の天井へと掲げて喜んだ。

 飛び出し来た悪魔族の青年に案内してもらいながらも猛ダッシュで不死族の待つ村の入口へと向かった。

 実は昔から小説を読むのが好きで、単純な恋愛物やサスペンス物、ライトノベルだって結構読んでいた。

 そんな好きだったライトノベルの主人公に自分がなるとは思いもしなかった。

 きっとこの展開は俺の隠された秘術が発動して村にやって来た相手をバッタバッタと薙ぎ倒して行く展開。

 そして悪魔族の美人な娘と恋愛的なあれになって、そこからあれして子供が、、、。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

 俺のテンションが有頂天に達した。

 この勢いで不死族なんぞぶっ倒してやるぞ!


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