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それぞれのカナン   作者: 笹原 カエデ
第一部 4人の戦士
8/21

酒場と外食


身体能力測定も終わり、後は三日後の結果が出るまで大人しくしておくだけになった。


街が近い者たちは帰省する事もあるそうだが、三日程度ならばとこの街で宿泊して適当に時間を潰すものが大半だ。


もちろん俺達3人はその結果が出るまでの3日間、ここホープ国に宿泊して街を見て回ったり、観光をしたりと適当に時間を潰して過ごす。



「手応えどうだったよ!?」


デネブがイキイキと尋ねる。様子から察するに本人は中々の手応えだったのだろう。

デネブは昔からアルタイルに対しては負けん気が強く、事あるごとに噛み付いては、そのたびにベガかレダに絞られるのがお約束であった。


「私は検査官結構いい反応だったし、手応えあったかな?」

「俺も。とりあえず出し切ったとは思う」

「だろ!こりゃ絶対受かったって!!飯食いに行こうぜ!!」

「なんでそうなるんだよ…。まぁご飯食べに行くのは賛成。もう昼前だし俺もお腹空いた」

「え?あ、あぁー……別に食べに行かなくてもいいんじゃない?

私がなんか作るからさ」


少しベガの表情が引き攣ったように見えた。

多少引っかかる言い方だったが、まぁ二人はそれを気にしない。


「え?なんで?そもそも食材ねーぞ?」


「え、」


慌てて貯蔵庫を確認すれば確かに空っぽであった。


あれ、おかしいな?昨日買ってきた食材はいずこへ?


「あれ?昨日ここに来る途中で買って来たやつここに入れなかったっけ?」

「あれなら昨日の夜、俺とデネブで食っちまったぞ」



宿の一室からバチーン!!と平手打ちの音が鳴り響いた。





「おぉ〜痛てて…」

「なんであんなに買ってきてたのに一晩で無くなるわけ!?」


本当にこの二人と行動を共にするんじゃなかったとベガは後悔し始めていた。

というか、何故後先考えずに食べ尽くしてしまうのだ!このバカ二人は!!



どういう胃袋してんの、とか何故一言も私に言わなかった、とか言いたい事は山程あるが、それはもういい、

とりあえず腹ごしらえを済ませてしまおう。


食材が無いとなるとベガ得意の料理も振るえない。

潔くアルタイルとデネブについていく他なかった。


(どうかあいつに出会いませんように)


ベガは人知れず心のなかでそう祈った。



「よーし!とりあえず酒場行こう!!」

「いいねアルタ!!飲み比べなら負けねぇぞ!!」


こんな真っ昼間から飲もうとするな!!


ハァ…本当にこの二人は私がいなかったら誰よりも早く早死にしただろうな。死因は急性アルコール中毒。


そう思ったりしたが、酒場と言えども普通の食事だって提供してくれるだろうし、別に悪くはない。

まだまだ明るい内から既に疲れたベガは考える事を半ば放棄。

もうそこで食事を取ることにした。



らっしゃい、と女店主の声が響き、私達は適当に近くの席に座った。


アルタは何を頼むか悩んでいたが、デネブは直感的にステーキを指差し、私をチラリと見る。


「ステーキとか高いでしょ?  ……まぁお金はあるし、いっか。

まだ頼まないでよ?私達まだ決めてないんだから」

「頼んでいいのか!?やったぜ!!ありがとう!!」


私もサッと目を通し、直感的に品を決めた。

こういうものは下手に悩むと中々決められなくなるものだ。


「ん、私サラダ炒め」

「了解。じゃ、呼ぶぞ。すいませーん!」

「えっ!?俺まだだって!?」


デネブはアルタイルを待つ気はないらしい。


さっさと店員を呼び出しアルタイルを急かす。

アルタイルも慌てて目を通し、直感的にサンドイッチを指差した。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「サンドイッチにステーキとサラダ炒めですね。

少々お待ちください」


若い店員さんがメモ片手にそそくさと厨房に向かっていった。

それを見届けたベガは浅い溜め息を吐き、頬杖をついて二人をジロリと睨んだ。


「な、なに?」


ベガの冷たい視線に少し怯んだ二人だったが、ベガは変わらず不満気に二人を見る。

しかし当の二人には何故これだけ睨まれねばならんのか分からずにただ困惑するばかり。


「あんた達のせいで余計な出費になったんだからね?」


そう、そもそもこの二人が昨日のうちに冷蔵庫を空になんてしなければこうして酒場に来る必要もなかったのだ。

二人を見る視線が冷たくなるのも当然といってよいだろう。


「あ、あぁー。  ……ごめん」


まずはアルタが謝罪した。

それに続けてデネブもまた頭を下げてごめん、と申し訳なさそうに謝罪をする。


「…ハァ、まあママとパパから多めにお金持たされてたし、別に良かったけどさ。

それよりも、今日この後どうすんの?

普通に観光でもする?」

「そこは考えてないけど、、まぁそれでいいんじゃね?

結果出るまでやる事ないしさ」


「あ、そうだ。結果と言えばさ、お前らアレンって覚えてるか?」


アルタイルが机に乗り出し、わざとらしく人差し指を立てて注目させる。

「……あの人?私が落としたペン拾ってくれた金髪の」

「そうそう!!!その人その人!!」


言いたかった事を察してくれたベガにアルタイルは満足気に笑い、二人に聞こえるように机に乗り出した。


「あのアレンっていう人、やっぱりとんでもなく強かったみたいだぞ。

なんでも騎士団で働く前も元々はアグド国の兵士だったそうだ」

「え!アグドの!?てことはあいつエボミーなのかよ!?」



王国アグド

現在世界で最も栄える大国だ。

エボミーが主力を握る国であり、世界的にも特にカゲロウ差別が根強い国でもある。

ちなみにかのブラフマーを所有してるのもアグドだという話。



「いや種族は俺らと同じカゲロウだってさ。本人が言うには。


それに、アレンがアグドの兵士だったっていうのは俺も試験終了後に同期が話してるのを盗み聞いただけだから、本当かウソかは分からないけどな」


「いや……多分それホントよ」


ベガがそれを即肯定した。

だが、なぜかベガはまたもうんざりしたような表情で遠い目をしていた。

またも不機嫌になっているベガに二人はまた自分達が何かやらかしたか?と不安になるが、やはりなにも心当たり思いつかない。

流石に今回は不思議そうにベガを覗き込む事しかできなかった。



「なんでお前がそれを分かるの?」

「…………私も本人から聞いたのよ」


二人は驚き、ベガに慌てて詰め寄った。


「え、話したの!?いつ!?」

「……試験終わってすぐよ。あんた達がスタコラと宿に戻った後にね」



あ、それでベガは帰ってくるのが妙に遅かった訳だ。


つまりアレンに捕まってたせいでベガが買ってきた食材達は一晩でアルタとデネブの腹に収まってしまったと…



二人は納得し、勝手に相槌を打つ。


「なに人のせいにしてんのよ!!」


ベガの怒声に周囲の者まで驚き、必然的に視線が集まる。

あまりに無責任な発言につい公共の場で声を荒げてしまい、少し赤面してしまうが、叫んだ事は後悔していない。

 

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