旅立ち
「レダ!!今お医者さんに連れて行くから!!まだ死なないでくれ!!」
「ご、ごめん。 なんか、もう…無理かも」
レダの首からは今も血が流れ続けている。
ベガが必死に布を当てているが、それでも止血する様子はない。
いや、例え今止血が完了したとしても、どのみち助からない。
あまりにも血を流しすぎている。
当たりに無数に散らばった赤い斑点が無慈悲な現実を教えてくれる。
「ねぇ……
私が眠るまで…そばに、、、いて?」
レダの声は今にも消えてしまいそうだった。
抱きしめれば折れてしまいそうな細い身体も、儚さを感じさせる銀の髪さえも霞んでしまうほどに、吹けば消えてしまうような小さな声だった。
「レダ…!!お願い…!死んじゃイヤ!!ねぇお願いだから!!」
「おい寝るなよ!!
アァクソ!!デネブ!!早く医者の所に連れて行くぞオイ!!」
「まだ助かるかもしれないんだ!!!おいレダ!!」
「もう……無理だって…」
3人の目からは涙が止まらなかった。涙が流れて流れて止まらなかった。
今ここで泣けばレダが死ぬという事を認めてるようなものなのに。
それを認めたくない3人の目からはそれでも涙が溢れ続けていた。
「は、早く山を下りようよ…!!ねぇ…」
「デネブ、レダを担げ!早く運ぶぞ!!」
「レ、レダ?……な、何かしたい事は…あ、あるか?」
デネブは、ここで妹の最後を看取ると決めた。
「あんたこんな時に何言って「ウルセぇよ!!!!聞コエねェダロウガ!!!」
デネブの怒声に思わず怯み、ベガは肩がすくむ。
「レダ…兄ちゃんがなんでも叶えてやるから。
なんでも言ってみな?」
デネブの目からは涙が溢れ続けていた。まるで壊れた蛇口のように。
「私…お兄ちゃん達と一緒に、ブラフマーを見たい…」
デネブの膝にレダを座らせ、左右にベガとアルタイルが座り、レダを支える。
そして、ブラフマーが通るのを待った。
「レダ…?ブラフマーってどれくらい、大きいと……思う…?」
「・・・」
「レ、レダ!ブラフマーは…、きっと山みたいにデカいんだよ!」
「・・・」
「レダ?返事くらいはしてやれよ…?兄ちゃん泣いちゃうぜ…?」
「・・・」
ーーーーーッズン…
ーーーーーーッズン…
!!!!
山の陰に隠れて、巨大な造形物が姿を現した。
荒廃した大地を踏み締め、一歩一歩4本足で進む赤い亀。
あれがブラフマーだ。
「レダ!ブラフマーだ!ブラフマーだぞ!!おい!!起きろよ!!」
「レダ!!ほら!!見てよ…!ね、ねぇ!ねぇ!!」
「ウオオ!スゲェぞ!レダ!!
ブラフマーって赤いんだなぁ!!亀みたいだぞ!!おい!!」
「・・・」
ーーーーーッズン…
ーーーーーッズン…
ーーーーーッズン…
ブラフマーは去っていった。こちらの事など気付きもせずに…
「………レダ。 ブラフマー……行っちゃったよ」
「見たかレダ。あんなデカいのどうやって作ったんだろうなぁ」
「最後に見せてあげれなくて、約束守れなくて…ごめんな」
レダの頬に一筋の涙がこぼれ、やがて地面へと落ちた。
この日、3人は初めてブラフマーを見た。
レダはその日の内に家へ運ばれた。
まずは身内だけで一足先に葬儀をする事にし、アルタイル家、ベガ家もまたこの葬儀に並び、レダに手を合わせた。
その日、3人は部屋から出てこなかった。
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「ウゥ…!!レダァ…!!レダァ…!!」
「レダは…最後に、見れたかな」
「・・・」
「……? デネブ?」
デネブは何かを決心したように立ち上がり、ベガとアルタイルにある覚悟の宣言をした。
「俺、町を出るよ」




