表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それぞれのカナン   作者: 笹原 カエデ
第一部 4人の戦士
16/21

過去と夢


ー街のとある酒場ー


「いや悪いな。突然集まってもらって」

「今日は暇だし、別にいいわよ」

「仕方なく、な」


アルタイル達4人はデネブ招集の元、テーブルを囲んでいた。

何故呼び出されたのか知らないデネブ以外の3人はまずはその本人に理由を確認してみる。


「で、今日は一体なんの用だよ?

俺らでどっか観光でも行く気?」

「それもいいけど、今日はちょいと真面目な話を、と」


デネブは指を2本立ててわざとらしくニヤリと笑う。

妙なドヤ顔をするデネブに少しムッとしたが、口には出さない。

俺は大人だからな。こんな事で一々突っかからないんだよ。


「集まってもらった理由は二つだ。


まず一つ。

どうやら俺達は自分が思ってるより遥かに弱いみたいだ。

そして、アレンは思ってたより遥かに…いや、そこそこ強いみたいだ。

というのも、前に任務の途中で龍に襲われた事があってな。

そん時にこいつ(アレン)が助けてくれたんだ」


へぇー、アレンが?

顔だけじゃなく、中身までイケメンだったかクソが。

ムカつく野郎だ。そのまま死んでしまえ。

そしてアレンは恥ずかしそうにしながら頬を掻いていた。


「龍に襲われた?よく生きて帰ってこれたわね」

「あぁそれなんだがな?

龍が現れるなり、先輩騎士の人達が瞬殺しちまったんだよ。

なぁアレン?」

「うん、僕もびっくりしたよ。

あんなに一方的に始祖の生物を倒せるだなんて今でも信じられない」



始祖の生物 


この世界に点在する300年以上昔から同じ姿を保ち続ける生物達の総称だ。

ドレイク隊長達が瞬殺した龍のような姿をするものが大半だが、森に潜む獣の姿や魚だったりなど、大昔から姿を変えない生物は意外とさまざまな所に潜んでいる。


ただ共通しているのは始祖の生物達は非常に手強くとても頭がよい、ということだ。

嘘か真か、大昔には人語を理解し、言葉を使う始祖もいたという。


「始祖を瞬殺!?

そんなに強いの!?騎士団の人達って!?」

「あぁ強かった。

信じられない位強かった」


「う、嘘だろ…。

まさかサロメ隊長やゴルーダさんも始祖を瞬殺出来るくらい強いのか…?」


普段の姿を思い浮かべたアルタイルとベガはあの人達が始祖を倒す姿をとても想像出来なかった。

例えるならば、近所の親父さんがナイフ一本で熊を一方的に叩きのめしたというような話だ。


「わ、分かんない…。でも、流石に瞬殺は無理でしょ…」

「だ、だよなあ?」


半疑の表情を浮かべながらベガ達は唸る。

先輩騎士達に若干失礼な気もするが、当人達はここにはいないしまぁよいだろう。


「そのサロメ隊長とかゴルーダさんって人達は知らないからなんとも言えんけど…

もしドレイク隊長達と大差ない実力だったら全然有り得ると思うぜ?」


うおおおお!!マジか!!

今の会話だけで俺とベガの中でサロメ隊長達の株がグングン上がっていく。

仕事に二日酔いを持ってくるどこか抜けたポンコツ騎士隊長とダル絡みを繰り返す呑兵衛騎士達がそれほど頼りになる人達だったなんて!



「おっと、話が脱線しちまったな。

一つ目はアレンが思ってたより強かったって話だ。

で、もう一つはそのアレンに話しておかなきゃならない事だ」

「お前アレン大好きだな」

「その挑発はこの際スルーしてやる」


挑発のつもりはないが


「アレン。


今からものすごく踏み込んだ質問をする。

でも嘘はつかずに、出来るだけ答えて欲しい。


まず、、、お前はアグド国の出身なんだよな?

てことは、お前はエボミー族って事でいいのか?」


!!!


一気に4人は静まり、空気が変わった。

酒場の喧騒は止まずに騒がしいままだが、気にならなかった。



聞きたかったがなにか言えない事情があるのだろう、と皆が聞けなかった話題だ。

いずれかははっきりさせておきたい事だったが、今回それをはっきりさせる。


「えっと…それは」

「すまん、この質問だけは答えてくれ。

絶対にはっきりさせなくちゃならない」




「・・・うん。

僕は、、、エボミーだよ。

つまり騎士団の…君達の敵…って事になるのかな?」





大して驚きはしなかった。


これは自分でも驚いた。案外冷静でいられるものだな。

ふと隣を見ればベガも同じように冷静な表情でいた。

アグドの出身という時点で俺らの中ではほぼ確定事項だったからだろう。


だが一度も本人から確認していない以上それは予想でしかない。

だからこうして今一度確認しておく必要があったのだ。


まぁ確認したところで俺達の中でアレンが敵になる事はない。

アレンがエボミー族だからといって、俺達が殺すべき敵という訳ではない。


エボミーだって皆が皆クソみたいな奴ではない。

当然中にはいい奴だっているし、当然クズだっている。

それは俺達にだって言える。

よく理解しているつもりだ。


だが、頭では理解出来てもどうにもならない思いというものはあるのだ。


「やっぱりてめぇエボミーだったのかよ…!!」

「!! おいデネブ!やめろよ?」


デネブは立ち上がって、今にもアレンに掴みかかってしまいそうな鬼の表情を浮かべていた。

その目つきは睨み殺すほどに鋭くなり、机の上に放り出された右手は血が出るのではないかと心配になるほどに強く握られていた。


反射的に俺は椅子を引き、いつでもデネブを取り押さえられるように身構えた。

ベガも同じく反射的に手を掴み、暴走寸前のデネブを諌める役目を取り、鋭い視線を向けてデネブを黙らせる。



「落ち着いて!アレンを殴ってもなんにもならないでしょ」

「・・・分かってる」


落ち着いたデネブは再び席に着き、テーブルに置かれた水を飲む。

まだまだ感情が爆発してしまいそうな様子だが、とりあえず一旦は止まってくれたようでよかった。


「ごめんなアレン。俺らも昔色々あってさ」

「いや…大丈夫。

僕の方こそ隠しててごめん。

と、いっても皆薄々気がついてたんだよね?」

「あ、あぁ、まぁな」


アグド国は現在世界で最も栄える大国であり、同時にエボミー族が主導権を握る世界でも特にカゲロウ差別が激しい国


そんな物騒な国の出身でカゲロウ族というのは考えづらい。

俺達の中ではほぼ確定事項だった。


「僕からも聞いていい?

昔何があったの?デネブがそんなに怒るなんて一体何が…」

「え、えぇと…それはその…」

「俺の妹がエボミーに殺されたんだ」

「え…!?」


「名前はレダ。

殺されたのは10年前になるな。

レダを殺した男は()()であっけなく死んじまった」


あの忌まわしい事件の事はアレンにはまだ話せていなかった。

というよりは誰も話そうとしなかった。

わざわざ話す事でもないし、もしもアレンがエボミー族であったならば、直接関わりはないとはいえ、この話を聞いてどう思うだろうという懸念もあった。


デネブとアレンの同部隊に配属された二人だから、どこかでそういう話がされていても不思議ではなかった。

だが、アレンはその事を知らなかった。


デネブもまた、アレンにその話をしていなかった。

というよりは話せなかったのだ。


ついさっき暴走しかけたデネブを止めてくれたベガとアルタイルの二人がいなければ、きっとデネブはアレンに殴りかかっていただろうから止めてくれる二人がいる場でなくてはこの話は出来なかった。


「そ、そうだったんだ…。ごめん。知らなくて」


再度申し訳なさそうにしながらアレンは縮こまった。

段々と謝る姿が様になってきている気がする。


「いいさ、俺達はもう乗り越えてるつもり。

それよりも、アレンはどうしてこの国に来たんだ?

エボミー族なんだったらそれこそアグドに残って兵士にでもなる方が良かったんじゃ…?」

「それは……僕の、夢を叶える為。

あの国にいたんじゃ、絶対に叶えられないから」

「夢?  えっと…その夢、、、聞いてもいい?」


「僕は、アグドが世界を滅ぼした理由を知りたいんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ