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それぞれのカナン   作者: 笹原 カエデ
第一部 4人の戦士
14/21

日々鍛錬


静かな森のある所


鳥が空へ羽ばたき、枝を揺らして木の葉を落とす。

すると風が木の葉を運んでは川がそれを受け止める。



風に流され、川へ向かってヒラリヒラリと落ちていく木の葉があと少し、という所で木刀に吹き飛ばされ、木の葉は突風と共に草むらの中へ消えていった。



森の静寂を破り、2本の木刀が互いに交錯し、打ち合い、鈍い音を鳴らして森に鼓動を促す。



木刀を握るのはベガとアルタイルだ。


二人は村の警護任務の合間合間に時間を見つけてはこうして手合わせを行なっていた。決して腕を鈍らせないように、一日でも早くレダの意志を継げるように…


10年間幾度も繰り返してきた二人の手合わせは極限まで洗練されており、その剣舞は百戦錬磨のサロメ隊長でさえも思わず感嘆の声が漏れてしまうほどだ。


そしてそんな手合わせが定期的に行われてるとくれば、それをただ黙って見守るゴルーダ達ではない。

二人の手合わせは村の貴重な娯楽の対象にされ、酒の肴になり、からかいの種として持ち上げられる。

挙句の果てには勝敗を競って賭け事まで行われる始末。



こんな事なら、大人しく任務が終わるまで控えればよかった…



ベガは何気なくアルタイルに手合わせをお願いした自分をぶん殴りたくなった。



「頑張れベガちゃーん!!」

「アルタイル!!負けんなー!!」



ギャラリーの視線が気になるベガはつい視線を逸らし、戦闘から意識が遠のいてしまった。


アルタイルはその隙を突き、あえて最短ルートの真正面から突撃し、ベガまで瞬時に距離を詰める。


「!! し!しまっ!!」


一瞬の油断にベガは咄嗟に薙ぎ払うように剣を振るが、その太刀筋には力が入っておらず、速度も遅い。


アルタイルはそれを腕につけた銀の鎧で受け止め、それを一気に弾き返す。

その時、ベガの体勢は数瞬崩れた。


「ッラ!!!」

「キャアッ!?!」

「オォッ!?決めた!!」



次の瞬間にはベガの脳天スレスレの所で木刀が静止していた。


もしこれがこのまま振り下ろされていれば、それが木刀といえどもただではすまない。


勝敗は明らかだった。



「勝負あり! 模擬戦はアルタイルの勝利!!」



「ィヨッッしゃああああアアァァァーーー!!!!!!」

「あぁーもう!!悔しい!!」


ベガは悔しそうに地面を殴りつけ、勝者のアルタイルを睨みつける。

それにアルタイルは得意気に鼻で笑い、ドヤ顔でベガを見下ろした。



「う〜ん、やっぱりベガはアルタイルに少し力が及ばないみたいだね。スピードはベガの勝ちだけど…。

まぁ女の子だし、気にする事はないさ。

仕方ないといえば仕方ない」

「戦場ではそんな甘い事言ってられません!男でも女でも一度斬られれば死にます!」

「う、う〜ん。意識が高いのは結構だけれど…。

もちろん戦闘に一番求められるのはスピードだけれど、やっぱり、パワーが劣るというのは近接戦闘では致命的だよ」

「う…」


サロメ隊長の冷静な分析に、自身の足りない部分と致命的な弱点を見抜かれ、気の強いベガも思わず言葉に詰まる。


幼い頃からデネブ、アルタイルとその両親に鍛えられてきたとはいえ、やはり性の差というものは大きく、どうしても同時期に鍛錬を積み始めた二人にベガの力は一歩及ばなかった。


「サロメ隊長。

提案なんですが、ベガには長剣ではなく短剣や槍のような身軽な武器の方が合っているのではないでしょうか?」

「あぁ、実は僕も考えていたんだ。

ベガの戦闘スタイルに長剣一本は噛み合っていない」


サロメ隊長と先輩騎士であるワトソンさんの会話に思わず聞き返さずにはいられなかった。


「え?武器って別に剣に拘る必要はないのですか?」


上位階級の方ならともかく新兵のうちから武器を切り替えるなど本当に大丈夫なのだろうか?

いや、もちろんベテランがOKな決まりがあるならば新兵もOKなのかもしれないが、やはり、新入りがそんな生意気なことをするというのは…なんというか上手く言えないが、あまり好ましくないだろう?


「もちろん武器に拘る事はないさ。

僕だって剣より(こっち)の方が手に馴染んだから入隊してすぐに切り替えてるんだもの。

ただ使わなくても帯刀はしておいた方がいい。

それだけで、自分は騎士だという事の証明にもなるからね」


剣を使う人が多いのは、入隊時に最初に支給されるからそのまま使ってる、というだけであって別に剣を使い続ける必要はないそう。


「…話を戻そうか。 

ベガのスピードを活かした戦闘スタイルに長剣一本というのはあまり噛み合わないと思うんだ。

さっきワトソンも言ってた通り、僕からも他の身軽な武器に切り替えるのをすすめるよ」


「あ、でしたら私、一つ希望する武器があるんですけど」

「ん?

もちろん構わないけど、なんだい?

なにか思い描いた理想の武器があるなら僕の方から開発チームに聞いてみるが、実際に作ってくれるかは期待しないでくれよ?

作る途中ですぐに死んだ騎士もたくさんいるんだから」


昔を思い出したのか、サロメ隊長は寂しそうに笑った。


「あ、分かりました。

えっと…なんというか、

モーニングスター?って言うんですかね?


あの、鉄塊と持ち手が鎖で繋がった振り回せる武器とかってないですか?


あ、できれば繋ぎは鎖じゃなくて紐や糸のようなものがいいんですけど」



あれ(ゴム玉)だ……


アルタイルはベガの将来が心配になった。



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