4人の騎士
「お会計 3570ギルになります」
「ま、4人じゃこんなもんか」
「あ、アルタイルさん。僕の分は僕が払いますよ」
「いいですいいです。
同じ同期のよしみだし、払わせて下さい」
遠慮するアレンだったが、そんな事は構わずにきっちり3570ギルをチャッチャと払い店を後にする。
「すみません、ありがとうございます」
「大丈夫ですよ。(母から貰った)お金はありますから」
この調子でもあと3日は十分持つだろう。
「…本当にすみません。それと、もう一つ教えて欲しいことが…
厚かましくて申し訳ないのですが、ベガさんの家はどこにあるのでしょうか?
一度しっかりと挨拶を、と」
「絶対来んな!!!
というか公共の場でそんな事言うのやめてもらえます!?」
「そんな…で、では僕の溢れる愛はどうすれば」
「ゴミ捨て場にでもどうぞ!!?」
「よかったじゃないかベガ。お前を貰ってくれる人が見つかって。
しかも元とはいえあのアグドの兵士でイケメンでお前にベタ惚れの一途なとびきり優良物件ときた」
「全っっ然話にならないわよ!!」
「それでもあなたを愛しています!!」
アレンは止まらない。
こりゃ相当な雷が落ちたようだな。
「アレンさん。そういえばアグドの元兵士っていうのはホントなんですか?」
デネブが話題を逸らして助け舟を出す。
まぁ本人は助け舟を出したつもりはなく純粋に気になっただけなのだろうが、結果的に話題を逸らすことは出来たので結果オーライだ。
「あぁ……本当の事ですよ。
…すみません。……あまりその話はしたくないですね」
アレンの表情が曇った。
何か辛い理由があるのだろう。
それならば、と流石のデネブも気を使ってそれ以上深く聞くことはしなかった。
「アグドの兵士って事は強いんすよね!!
それは騎士団合格っすよ!!
もし同じとこに配属されたらよろしくお願いします!!」
自分の合格を微塵も疑っていないデネブにベガは呆れ気味に溜め息をついた。
「まだ合格するかは分からないでしょ」
「何言ってんだか…!!
俺らが落ちる訳ないっしょ!!」
「あんただけが落ちてくれれば文句なしね」
うんうんとアルタイルが頷く。
「てんめぇ!!そんなデカく頷く事ねぇだろ!!」
「なんで俺だけ噛みついてくんだよ!!」
いつものようにギャーギャーと騒ぐ二人にいつものように頭を痛くするベガ。
この二人はどうしてこう、いつも…
こんな道のど真ん中でやめてよ…恥ずかしい
「アハハ!!皆さんは仲がいいですね」
「そう…ですかねぇ…」
「…えぇ、仲のいい友達がいるのはいい事ですよ。
僕もあんな仲になりたいです。
・・・ベガさん。」
ビクッ「な、なんですか?」
また耳の痛い愛の言葉を聞かされると思いベガは身構える。
だがアレンは静かに微笑み、恥ずかしそうにしながらベガを横目でチラリと見つめ、またそっぽを向いてしまった。
「そ、その……出来ればなんですが…あの、なんといいますかね」
アレンは途端に目元を泳がせて縮こまる。
ついさっきまでの堂々とした態度は身を潜め、いまいち覚悟が決めきれない、情けない表情でベガを横目で見る。
(なに? まさかこんなところで改めて告白でもする気?)
出会った瞬間から告白を受け続けてるようなものだが、こんな煮え切らない態度で改まって告白されても困るだけだ。
流石にやめてくれ、と思い身構えるベガにアレンは言った。
「僕にさんはつけなくていいです。
どうか、アレンと呼んでくれませんか?
僕も皆の事呼び捨てで呼ぶので。
そ、その…僕と友達になって下さい!」
(……え?なにそれ?)
ベガはしばらくキョトン顔でアレンを見たが、彼の言葉を頭で整理し、理解したとこで、やがて小さく吹き出した。
「な、なにがおかしいんですか!!」
「ご、ごめんごめん!!別にバカにした訳じゃないの!」
一通り笑ったベガは一転し、左手でピースサインを決めて笑って見せた。
「オッケーアレン!!合格出来たらよろしくね!!」
その笑顔は確かに太陽のように弾ける笑顔だった。
「俺らもよろしく!!」
「だな!!」
ふと声の方向を見ると顔のあちこちにあざの出来た二人が仲良く肩を組んで親指を立てていた。
「遅くなったけど俺はアルタイル!よろしく!!」
「俺はデネブだ!!よろしくな!!」
「!! うん!!よろしく!!」
アレンは人懐っこい笑顔で同じように親指を立てた。
〜3日後〜
ついに迎えた合格発表の日。
合格者は宿舎に番号が貼られ、不合格者は貼られない。
全員が注意深く探す…
中には狂喜する者もいるし、咽び泣く者もいる。
祈るような気持ちでそれぞれの番号を探す。
そして…
俺達3人…いや4人は一斉に飛び上がって勢いよく互いの手をぶつけた。
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諸君らも今日を持って一端の騎士となった!!
騎士団の一員である自覚を持ち!
自らの正義に従い日々精進せよ!!
民のため!そして我等カゲロウの未来のため!
その命を捧げる覚悟はあるか!!
『ハッ!!!!』
騎士達よ!!
カナンに自由を!!
『カナンに自由を!!』
その日の晩、俺達含めた新兵達は王宮に招かれた。
てっきり国王からの言葉でもあるのか、と思っていたがその日は国を上げての宴が開かれた。
なんでもこの国では毎年新兵が出ると必ず祝宴が開かれるらしい。
もちろん、宴の主役は新兵
飲み食い無料と聞いてデネブもアルタイルもすっ飛んで行ってしまい、浴びる程の酒と料理を皿に持って席に戻ってきた。
「もう!せめてベッドには自分で戻りなさいよ!!」
だが、今日ばかりはハメを外してもいいだろう、とベガも人の事は言えずに、洒落たワイン片手に肉にかぶりついている。
「私らに任務が出るのは3日後らしいし、二日酔いで仕事に遅れる心配もいらない。
フフ!!今日くらいは私も酔っちゃお♡」
そうしてベガはワインをグラスに注ぎ、飲み始めた。
「あ、ベガ。僕が注ぐよ」
「ん、ありがとね。アレン」
「よろしければ僕と向こうで飲みませんか?
あなたの瞳に乾杯を」
「そういうのいいわ。じゃ、次開けちゃうから」
え?もう飲んだの?
アレン含む周囲の人間はそのハイペースに驚いたが、ここからが更に凄かった。
ベガは意外にも中々の酒豪でカパカパと酒を開けては口に入れていく。
アルタイル達を除いた同期も使用人も王族ですらもベガ……というよりは3人の新兵の飲みっぷりに感嘆の声が漏れる。
そして同時にその酒に無理矢理付き合わされる金髪の美青年に同情していた。
「だっっしゃあぁーい!!もっと酒持ってこいやあぁぁ!!」
「なんぼのもんじゃあああぁぁぁ!!!」
「何よアレン!!今夜はまだまだ寝かせないわよ!!」
「も、もう許…許し…オプ」
……………カナンに自由を




