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第001話「明けの明星」


 ぽこぽこぽこぽこ・・・。


 心地よい。ここは海の中なのか?転生先が空なら聞いたことあるが、海落ちってそりゃないでしょ。しかも、なんか顔にぬめぬめして膜みたいなものが張り付いてやがる。深海か?冥府か?

 俺は、転生する夢を見ていた気がするが・・・。


 そもそもあれは夢なのか?


 ふとそんなことを考えていると、昔の夢を思い出す。

 

 いつの頃だったかな。俺が小さい時、ネットゲームでぼろ負けして泣き喚いていた事で母さんと喧嘩して、公園で一人黄昏ていたら声をかけてくれたお兄さんがいた。


 あの時のお兄さんは気さくで、落ち着いていて、俺が落ち込んでいたのに慰めてくれた。

 あの時の俺はそういうのでさえも嫌悪していてたけど、共通のゲームの話題があってもりあがってしまって、不覚にも心を許していたな。


 今になってそんな昔の思い出の夢を見るなんて、どうかしてるぜ。


 そんな俺の問いに夢の中のおにいさんが返事をした。


 「君はそんなところで眠っていていいのかい?もう一度、手をかざしてごらんよ。」


 

 パチン!!!



 すると急に顔に張り付いていた何かがはじけた。俺は息が苦しくなる。


「っ!!?」


 ここは・・・。本当に海の中か!!?

 夢から覚めた俺は一心不乱に泳ぎ続けた。しかし前に進めない。いや違う前に進めないんじゃない。進む場所が無いんだ。まるでどこか狭い排水溝の中にでもぶち込まれているようだ。

 しかし俺はもがき続けた。もがいてもがいて…。腕の力が無くなるくらい必死にもがいた。


 うっ…い…息が…。苦しい。

 

 どうすればいいんだ…。最初からピンチじゃねぇか。そんな哀れな脱出劇を演じてる中、一つ気付いたことがある。


 …ん?水の流れが俺の頭状で途絶えている…?ここだ!!ここしかない。

 俺は必至で上に上がろうと足で地を蹴った。

 すると、光が見えてきた。その瞬間ものすごい地響きと雷が俺の耳を襲う。


 「ゴギャーーーーーーーーーっっ!!!」


 違うこれは女性の叫び声だ!!?てか・・・・うるさ!!!!!鼓膜が破ける!!

 

 その地響きと同時に、視界はクリアになり、空中にぶら下げる放物線が現れダイヤモンドリングの様な光で線上を照らした。

 光は一瞬にして輝きを失い、中央だけ少し輝きを伴って大きな山が見えた。左右は森林で覆いつくされているが、悲しきかな酸性雨によって中央だけ焼け野原だ。

視界がぼやけている。正直、目を動かすことさえもやっとだ。前世で視力が悪すぎた俺には慣れ親しんだ光景だが、レーシックしてそんなことも忘れていた。


 そうこうしているうちに、だんだん息が苦しくなってくる。もうろうと意識が落ちかけてきたその時、第二の天変地異。天地が逆転した山の上、空にはこの世とは思えない光景が…。


 その光景とは…逆さの山とは対照的に壮麗で大きな人の影が姿を現した。…何か俺に呟いている。意識を集中すれば何故かはっきり見えてくる。最初は黄色いオーラのような影だったのだが、その気の流れはだんだん輪郭をはっきりとさせ、赤から黄色…緑と合わさり、最後には人間の肌の色を構成させた・・・。そこに移ったのは絶世の美女・・・。


 あぁ。神よ。偉大なる神よ。われを助けたまへ。


 世界の創造に出会ったならばこんな光景なんだろうな。俺は、そう思いながら意識を閉ざしそうになる。その時・・・。


 バシッ!!!!!!!!!

 

 背中を殴られた!!痛ってぇ――――!!?何しやがんだ!?


 第三の天変地異は、暴力的に俺の体に衝撃を走らせた・・・。

 何度も何度も俺の背中に降り注ぐ雷の雨!


 バシッ!!!!!!!!! バシッ!!!!!!!!! 

 バシッ!!!!!!!!! バシッ!!!!!!!!!



「ックハァー!」


 そこでようやく俺は、むせ返るように息をした。


「うおぉーーーーーっ!!!!!」


 俺は息ができた。感謝した。女神は微笑んであまつさえ涙も流している。

 俺は感謝した。神に感謝した。この歳になって初めて恥ずかしげもなく素直に大声で号泣した。…何度も…何度も…。


 神に感謝や。


 そんなことも束の間、今まで山だと思っていた文化遺産が、一変して気味の悪い笑顔で覗き込んでいた。否、顔はもともとあったのかもしれない。俺が気付いていなかっただけか?


 その第四の天変地異に、またもや号泣してしまった。この歳になって恥ずかしい…。怖いものは怖いのだ。


 それも束の間、俺はゆっくりと女神の脇に迎えられ事の現状を悟る。

 そして、女神の横にこの世のものとは思えないイケメンの男神が立って、優しいまなこで世界を見渡すが如く俺を見ていた。


 あぁ。これ見たことあるぞ。俺…今…。


 生まれてきたんだな…。赤ちゃん目線ってこんなんなんやな。恐ろし(笑)しかし、赤子の頃は視力は無く、目の筋肉も制御できないと聞いていたが、何か理由があるのだろうか・・・。まぁ、ここが異世界なら考えても秩序は分からない。そんなことより安心した。


 ・・・そうか。俺は本当に生まれ変わったんだな。


 しかし・・・。よかった。優しそうな夫婦じゃないか。この夫婦なら安心して第二の人生を歩んでも心配なさそうだ。


 そう思いながらイチャコラしてる夫婦を微笑ましく見ながら俺は意識を失った。

 


———



 そして一週間の時が経った。



 なかなか珍妙な光景だったが俺もようやく現状を飲み込めるようになってきた。


 本当に異世界に転生したんだな。でもここが異世界なのか確実な証拠はまだ見ていない。

分かるのは、親が相当に整った顔立ちで、家の中は少々広い中世ヨーロッパの内装をしていた事だけだった。


 テレビ無いんだ・・・。地球ほど科学文明は浸透してない。電話もない。連絡手段もない。これは、異世界転生ものとしては文明築くイベントに胸膨らませることが出来そうだ。

 前世でのそういった知識はあまり長けていない。あるとしたら多少人間の体の構造を知っているくらいか。最初から探求していくのもなかなか悪くない。ここは、本当に楽しめそうだ。


 しかし、本当に何を言ってるか分からない。言語が異世界語だ・・・。とりあえず分かったことは、あるお楽しみタイムの時に何度も何度も呟いてる言葉がある。


 おっと…。そうこうしてるうちに早速お楽しみタイムの始まりだ。


 そうしてると、母親と思しき赤い髪の女神が俺を抱き上げてその体に垂れ下がる爆n・・・スイカを俺の口にぶち込んでくる。


「フィリス・・・。」


 そう何度も呟く。これが今のところ俺の名前なのだろう・・・。我が名前ながらなんていい響きだ。なかなか厨二心をくすぐる良いネーミングセンスではないか。

 と心の中でこの第二の両親に感謝をしつつ俺はまた眠る。悪いな。食う寝るところが赤ん坊のすることでな。





———



 そして、1ヶ月の時が立った。



 母親たちが騒々しい。俺も何故か可愛い洒落た民族衣装に包まれているし。どうしたんだろう。


 とりま、何を言っているか分からないが何処かに行こうとしてるのだろう。「行く」っていう単語が伝わった。



 そして、初めて俺は家を出た。

 外の景色はとても鮮やかで壮麗な緑や麦畑が多い。ってか、なかなか大きい家だな?!うちの家。

 二階建てで二世帯は住めそうな家だな。まぁ、見た感じ妾や家政婦はいなかったし、貴族ではなさそうであるから、比較的まだ小さい方なのかもしれないが、そこらへんにぽつぽつ建っている家よりは少しはでかい。

 

 というか、畑が多いな。農地なのか?俺の両親は農民なのか?にしては家が広い。考えていても仕方がないか、それは言語を理解していったら少しは分かってくるだろう。考えすぎるのも俺の悪いクセだ。



 そうして、歩いていると少し大きな協会につく。外観は本当に綺麗で何より建物の隣に崖があり上から流れる滝は教会を美しく迎え入れ美を象徴するがごとく虹がかかっているのだからな。こんな小さな村に立派なことだ。


 そうして俺たちは教会の中へと招かれた。

 俺は大きな女神像の前まで連れて行かれ、可愛い花柄の赤いテーブルクロスのかかった小さな台の上に乗せられた。


 少しすると、神父が巻物をとって呪文めいたものを唱えている。


 すると、巻物が光りだした。ここで俺は初めて、実感した。本当に異世界なんだな・・・。

 

 少しして俺の夫婦が巻物を凝視してぽかんと口を開けていた。しかし、数秒後にはとてもうれしそうな眼差しでこっちを見てほほ笑んでいた。


 そして第二の母が涙を流し、俺のもとに近寄るとずっとこうつぶやいていた。


「あああああ・・・。」


 どうした?笑いながら呻いても気持ち悪いぞ。さっきからずっと呻いている。


 「あああああ・・・・。」


 父親もそろって笑いながら俺に近寄ってきている。


 「「あああああ・・・・。」」

 

 神父もシスターも。やめてくれ。ゾンビ映画じゃないんだから。とって食う気か・・・?転生して初っ端からグロテスクなバットエンドとかみたかねぇぞ。


 そして一斉に俺を見つめてそう言った。


 「「「「あああああ!!!」」」」


 こわい・・・。しかし次に襲う言葉は、これよりも恐ろしかった。俺は母親のデカ乳をしゃぶりながら何度も何度も聞いてなんとなく察していた単語だった。母親は代表してこう言った。


 「あ・な・た・の・名・前・は……あああああ!!」


 にっこりスマイル。母親も。俺もっ!!





 ・・・・・・・・・女神ぶち殺す。



 






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