聖女は、ふるまう。(2)
約1ヶ月後。
「結局、こんな感じになるのよね。」
期待のまなざしの数々に耐えきれず、結果花の前には、鉄板の上でじゅうじゅういっている香ばしいソースの香り。
北の森にて、開催中なのは、『粉もののイリュージニスト』花によるお好み焼きパーティーである。
ただ、今回は、北の領主フィラードによる全面協力で、魚介も豊富に用意された豪華版。
「定期的に花のオコノミヤキが食べられるなら、毎回これでいいのでは?」
二枚目を頬張りながらそう言うのは、ミリエルだ。
『うむ。これならまた食べたい。』
ポチも満足げだ。
『綺麗に食べられないわ。美味しいけど。』
ジュエルは、初めての味に戸惑いぎみ。
『おいしーい!』
リリーは手をソースだらけにして食べている。
(あとで、イルディンと、あと、材料提供のお礼にフィラードにも・・。)
結局、大量に作ることになって、忙しい花である。
「・・にゃあ。」
突然、可愛らしい鳴き声がして、そちらを見ると、金色の毛並みにブルーの目をした綺麗な猫がいた。
どこから迷い混んだか分からないが、怯えた様子もなく、花のそばで毛繕いを始める。
花は焼き上がりを待つ間、猫の首もとを撫でてやる。
が、突然、はっとした顔で手を止めると、焼き上がりを冷ましていた皿から1切切り分けて小皿にのせ、猫の前に置いてみた。
「にゃ?」
「異世界の食べ物、興味あるんじゃない?従業員には、サービスするわよ?」
にやりと笑ってやる。
「ばれたか。」
頭に直接届く、ゴーシュの声。
(その見た目じゃあ、隠す気もあんまりなさそうだけど。)
花が苦笑いしていると、猫とお好み焼きがすうっと消える。
「美味しいもの、食べられるなら、また来るよ。」
という声を残して。
(じゃあ、次も美味しいもの、準備しなきゃね。)
花は、早くも、次のことをあれこれ考える。
ミリエルにはまた作ってあげるとして、どうせなら、いろんなものを食べてもらいたいと思うのだ。
せっかくの『称号』だ。
好きなものを共有できるなら、それは幸せだと思う。
花が始めた旅行代理店は、初仕事が大変だったため、なんだかんだで一旦業務停止をイルディンから言われてしまった。
ゴーシュを雇った責任もあり、予約分は国の責任で、騎士などが護衛としてつき、実施された。
結果的に、いい収入になったようだ。
一生の中で、できることには限りがある。
でも、
と花は考える。
絶望的な状況でも、本当に絶望しなければ、道は拓ける。
この世界で、花が持っているものは多い。
『魔力』『浄化の力』『称号』・・。
そして、何よりも。
花は、目の前にいる皆を確認し、今は別の場所にいる人たちを思い浮かべる。
召還されてから今まで、多くの人に出会った。
彼らの力が、花の背中を押してくれる。
「焦げそうですよ!」
不意に声がして、花は慌ててひっくり返した。
ミリエルが、皿を持って立っている。
その笑顔はちょっとまぶしい。
これからも、この世界で、いろんな出会いときっと、別れがある。
でも、花には、これからを共に歩もうとしてくれるミリエルの笑顔がある。
花は、花らしく進む。そうやって時を重ねていきたいと思う。
「花、お代わりください!」
誰よりも食べている気がするけれど。
花は、特別に具材を盛り込んだデラックス焼きをお皿にのせて、ミリエルに渡した。
ここで、本編は一旦おしまいです。
拙い文章でしたが、読んでくださった方、本当にありがとうございました。
あれこれ外伝も浮かぶのですが、一旦ここで完結して、新作にかかろうと思います。
また、ぜひ応援よろしくお願いいたします!




