聖女は、探す。(2)
楽士たちの一団も東に向かうらしく、旅路を共にすることになった。
ここからは、行程も少ないので徒歩で向かう。
ならんで歩き始めると、自然と女どうし、踊り子の女性と一緒になった。女性はサラ、と名乗った。
「花さまのことは、ゴーシュ様から伺っていました。素敵な女性がいるって。」
サラの声は、心地よいソプラノで、美しい。
「ゴーシュから?えっと、あなたは・・」
「私たちは、ゴーシュ様と契約を結んでいるのです。」
サラはにっこりと笑いながらそう言った。
「契約?」
聞き返すと、サラの声が小さくなる。
「はい。私たちには、エルフ・・魔物の血が混ざっているのです。」
!
思わず大きな声を出しそうになって、口を押さえる。
この美女は、なんという爆弾発言を・・!?
「花さまには言ってもいい気がして。さらにぶっちゃけると、私たち、あなたを魔王にするためのイベントとして、皇太子を暗さ・・。」
今度は、サラの口を思い切りふさぐ。
「大丈夫ですよ。花さまにしか分からない特別な言語でしゃべっています。」
サラは鮮やかに笑う。こちらが圧倒されるくらいの色香を含んだ笑顔。
「だったとしても、危機意識がなさすぎます。自分でいうのもなんですが、私が信用に値するという保証はないんですよ?」
花が言うと、サラは余裕の笑みで続ける。
「大丈夫。私、そういう勘は当たりますから。それだけで生き残ってきたようなものです。」
信用されていると喜ぶべきなのか。いまいち相手の目的が分からず戸惑う。
「なぜ私にそんな話を?」
探るように尋ねると、サラは答えた。
「ゴーシュ様から演目の変更を言われたのは、初めてなんです。」
笑顔は絶やされない。
「演目の変更・・。」
「はい。命を奪う舞から、命を与える舞に。」
花は絶句する。
暗殺を匂わされていたためなんとなく不穏な予感はしていたが、もし、もとの演目だったら、今ごろ・・。
「・・でも、すごいですね。その場に居ただけで回復までしてしまうなんて。」
深く突っ込むのが怖すぎて、思わず話題を変えてしまう。
「ええ。私たちがこれを仕事にしているうちに、身につけた力です。『称号』というそうですね。」
・・何か、ひっかかる。
「称号・・」
「花さま。」
サラの声が真剣味を帯びているのを感じて意識を引き戻される。
「ゴーシュ様を救って下さい。」
花は、サラの顔をじっと見てしまう。彼女は、どこまで知っているのだろうか。
「かつて、東の地は、魔王領でした。東の者の中には、エルフと人間の混血の者がいます。エルフの血が濃いものは、ゴーシュ様と契約を結ぶことで魔力を安定させ、生き永らえてきました。」
花の知らないこの世界の歴史。ゴーシュが導いた魔王が、全てを破壊した世界。そこで、どんな物語があったのか、花に知る術はない。
「私は今、自分を守ることに精一杯よ。そのために、ゴーシュを退屈から救う、と言った。でも、運命を変えることはできそうにない。」
サラは、全てを知っているようだった。
「花さま。ゴーシュ様は、随分長い間、この世界に興味を失っているようでした。本当に久しぶりなんです。楽しそうなあの方を見たのは。」
迷惑極まりないのだが、それを顔に出さないようにつとめる。
「ゴーシュ様を救うのは、退屈から、ではありません。花さま。ゴーシュ様を・・孤独から救って下さい。」
いや、殺されかけているのだけど。
だが、サラの顔は真剣そのもので、花は、それを拒否することができす、小さく、うなずいてしまうのだった。




