聖女は、空を飛ぶ。
北の了承はすぐに得られた。さすがはフィラードである。
魔物のいきる術を、フィラードも探っている。
北の森が不可侵区域になっているのは、そんなフィラードの配慮からだ。
馬車の改良も早くできた。こちらはエリザさんのところで働いていた時の人脈のおかげだ。
エリザさんにも話が聞きたいのだが、とりあえずはジュエルのできることを確認する。
イルディンにも立ち会ってもらい、まずは花とミリエルが馬車に乗り、ジュエルに持ち上げてもらう。
「わあ!!」
「わああ!!」
感動の声をあげる花と、パニックの声をあげるミリエル。
遊園地のアトラクションのように、馬車ごと二人は空を飛び、森を旋回してもとの位置に戻る。
ジュエルは力の加減が上手く、着地でワンバウンドしたのを除けば充分な快適さだ。
いいんじゃないだろうか。
次にイルディンとフィラードが乗り込むと、コツを掴んだのか今度は着地も危なげなくこなす。
さすがに降りてきた二人は少し顔色が気になったが、驚いたことに合格だと言われた。
騎士たちの説得もしてくれるという。
ただし。
魔物の使役は誰にでもできることではなく、今後も同じ手段を使うことは厳しい。
聖女、の名は一般には明かしていないからだ。
今回だけの特例として、認めるとのことだった。
(今回の騎士たちって、なんか特別扱いよね。)
疑問はあるが、まずはプランの確定だ。
ポチに馬のテレポートを頼むと、人間より耐性があるようで、きょとんとしていたぐらい。問題無さそうだった。
これでルートが確保できる。
「あとは、音楽、か。」
花はとりあえず、情報収集の初めとして、エリザさんに会うことにした。
だが、その前に。
「ねえ、ジュエル。もう一度空を飛びたい!!」
『いいわよ、主様。あなた一人なら、風魔法で一緒に飛べるわ。』
ジュエルは、花の体を風で覆い、そっと手を繋ぐ。
ふわりと花の体が浮いて、二人は空を飛ぶ。
空を見上げ、女の子たちの笑い声を聞きながら、地上では、取り残された若き神官とおじさん二人が、なんとなく顔を見合わせて苦笑いしていた。




