表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/90

聖女は、契約する。

「ああ、東は音楽が盛んだからね。数多くの踊り子や吟遊詩人が東の出身だよ。」

ゴーシュからは、一瞬で知りたかった情報が飛び出した。

オリバーは、そのことを知っていたのだろうか。

踊り子、と言えば。

「エリザさんって、もともと踊り子だったのよね・・。」

なんだか、つながるような気がする。

ゴーシュに全部頼ってばかりではいけない。花は、エリザさんに聞いてみよう、と思い立つ。

それと。

「ゴーシュ。ルートの件だけど、魔物を使役するという案は検討するけれど、他の方法もみつけておきたいの。お願いできる?」

ゴーシュは相変わらず軽く了承して、ルート地図の部屋に入っていった。

魔物に手伝ってもらう旅、か。

まずは交渉だ。でも、もしもそんな風に関わり合いながら暮らせるようになったら。魔物たちのいきる道をひらく一歩になるかもしれない。

『ポチ。今来れる?』

目を閉じて呼びかけると、目を開けた時には、ポチがいた。

使えば使うほど、魔法の力は上がるというけれど、ポチのテレポート力、めちゃくちゃ洗練されてきている気がする。

フィラードのじゅうたんに劣らない快適さで、ポチは花を北の森へ連れていってくれた。


『空を飛ぶ魔物を使役、か。』

まずは、中枢で会議である。

『馬車を運ぶなら、力持ちじゃないとだね。』

メンバーは、ポチとリリー。

「精霊の力を借りることも考えたんだけど。風の精霊とか。」

プランの一つとして言ってみる。

『風の精霊は、いいこなんだけど・・』

リリーはうーん、と考えるしぐさ。かわいいんだよなあ。

「何か、問題あり?」

『あのね、力の加減があまり上手じゃないの。』

馬車壊しちゃうかも、と言われると、やはり躊躇してしまう。

「だとすると、魔物に頼るのが最終手段・・。」

浮かぶ魔物はいるにはいるのだが。

『主。たぶん、ある程度目星をつけているからこの森に来たのだろう?翼のある魔物は限られる。そして、この森には一体しかいない。』

そうだ。ポチがそれに気づかないはずはない。

「ハーピーを呼んできて欲しい。まずは、話してみないとね。」

『了承した。』

ポチは森の奥に下がり、程なくして、『彼女』を連れてきた。

『久しぶりね。聖女様。』

ほのかに色気を漂わせる羽根のはえた美女。

とはいえ、天使とは異なる。

手のかわりに羽根があり、脚は鳥のそれである。

もともと王都の近くに住んでいた魔物。仲間を失い、助けを求めて強い魔力を持つポチに引き寄せられて移動してきた。

「長い間、ちゃんと話せないままでごめんなさい。」

やっと、謝れた。

本当は、仕事関係なく会いに来るべきだった。すぐに来れなかったのは、忙しさのせいではない。単に、合わす顔がなかったのだ。

だが、魔物に助けを求めてみよう、となった時、だからこそ彼女が思い浮かんだ。

憎しみを乗り越えなければ、二つの種に、共存の道はないだろう。

「今日は、お願いがあってきたの。私の夢に、力を貸して欲しい。」

『聞こえていたわ。馬車を運んで、空が飛べなければならないのなら、私は確かに当てはまる。』

ハーピーは、探るようにこちらを伺った。

『あなたは、力を貸して、と言った。使役するのでは??』

花は首をふる。

「使役というのは、私からすることではないと思ってる。私を主とすることを望んでくれたから、ポチとリリーとは契約しただけ。私は、あなたと対等でありたい。」

ポチやリリーだって、花の中では対等に扱うべき相手なのだ。力を貸してくれることを、当たり前とは思っていない。

ハーピーはふふふ、と笑った。

『コボルトが、なぜあなたを主としたか、よく分かった。私も、あなたを、気に入ったわ。』

ハーピーは、その場に片膝をついた。

『名前を。』

花は戸惑う。

「契約、必要なの?」

ハーピーは真っ直ぐ花をみつめた。

『あなたのことは気に入った。でも、人間はキライ。私の家族を奪った。あなたの命令でなく、私の意思で動けば、私は人間を傷つける。』

ハーピーにとって、契約は、自分を抑える手段になる。

『主。』

横でやりとりを聞いていたポチが言う。

『契約は、一方的なものではない。我々は主に従うかわりに、主の加護を得る。主の魔力は心地いい。ためらわなくても大丈夫だ。』

必要なら、契約すればいい、と背中をおす。

『魔物は人間みたいに、ごまかしたり嘘をついたりしない。この者がそう言うなら、事実、そうなのだ。』

「でも、嫌なことを、契約で無理やりさせるわけには・・。」

『私がそうすることで、魔物の生きる道がひらけるかもしれないのでしょう?あなたはやってみたいのでしょう?』

ハーピーは、澄んだ目でこちらを見た。

『名前を。』

花は、心を決める。

「ジュエル。宝石という意味の言葉。どうかな。」

陰より光をイメージできるように。

『我が名を受け入れ、あなたを主と認めます。』

光が彼女を包み、羽根の根元が黒になり、耳にはリリーのよりはおおぶりの黒いピアス。

「力を貸してくれてありがとう。よろしくお願いします。」

と花が言うと、ジュエルは、優しく微笑んだ。

ポチが、またテレポートをしてくれる。

『主。礼を言う。』

帰り際にポチが言った。

『目的のない生は、目的を探そうとする。おそらくジュエルの言葉は本心だ。』

契約で抑えることに決めた人間への思い。でも、それを果たすために力を振るえば、憎しみの連鎖が始まる。

『魔物にも心はある。主との契約は、我々を不幸から救う手立てだ。』

その言葉に見合う生き方を、貫かなくてはいけない。

花に課せられたものは大きい。

ベストは分からないが、少しでもベターを。

花は、次に向けて考えを巡らせていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ