従業員は、ポジティブ。
「おはようございます!」
元気な声が、教会に響く。
扉を開けて入ってきたのは、金色の髪に、碧の瞳をした、分かりやすい王子系ハンサムである。
「おはよう、ゴーシュ。」
挨拶すると、ゴーシュは、とろけるような笑顔を見せた。
「花!今日も可愛いね!」
「・・相変わらずまぶしいわね。」
このキラキラ、今までになかったタイプのため、いまいち正解の返しが分からない。
そして、ミリエルが分かりやすく不機嫌になる。
今日もほら、ゴーシュに出すコーヒーが、濃いってば!!
ハラハラする花をよそに、ゴーシュはなんともない顔でコーヒーを一気にあおり、密かに仕掛けられたけんかは、今日もなかったことにされる。
「・・そうそう。ゴーシュ。依頼人の経路について、意見が欲しいんだけど。」
気を取り直して、花が地図を広げると、王都をスタートして、東にぐーんと赤い線が伸びていく。
この線は、次のプラン。東の地に出張に行くという騎士二人の旅である。
この国では、護衛や戦闘の仕事を受け持つ役職を騎士が担う。
力による支配は、勘違いした権力者を生み、不正も起きやすいため、人員は一ヶ所に長く留まらず、異動していく。
定期的に王都で教育を受けた新しい騎士が地方に出向き、任務に着く。
今回騎士たちは、最近配置された若い騎士たちの様子を見て、ついでに東の地の情報をいろいろ仕入れてくることを託されているらしい。
「まずは、道ね。このルートで、気になるところはある?」
聞くと、ゴーシュがすぐ近くにきて、地図を覗き込む。
髪の毛がさらりと流れる。まつげが長い。
(っていうか、近いって!!)
ミリエルがすごい顔でこちらを見ている。
見れば分かると思うが、浮気じゃないから!!
「そうだね。概ねこれでよいかと思う。あ、でもこの辺りは工事をしてるから、避けないとなあ。こっちは?」
なぜかゴーシュは、やたらとこの国の細かい状況を知っている。領地の整備なんて、領主任せなのに。
そして、その情報は常に的確。何回か実際に確認に行ったことがあるから間違いない。
しかし、彼が別ルートとして、示したのは、いかにも怪しげな森を突っ切るルートだった。
「こっち?この森って、大丈夫なの?」
意外すぎて、振り返ると、すぐ近くに、ゴーシュの顔。
「うん。行けると思うよ。」
固まる花にゴーシュはにっこり笑う。
そして爆弾発言。
「花が、もう一人、空を飛べる魔物を使役すればいいんだよ。」
・・ドア付近で、ティーカップが割れる音がする。
いろいろ波乱が起きる予感がしていた。




