男達の密会(2)
「ちょっとしゃべりすぎだ。警戒されたじゃないか。」
イルディンは、諌めたが、フィラードは飄々としたものである。
「もしもの時のために情報を隠すのもいいが、まずはもしもを起こさない努力をすべきだろう?」
こちらは切り札を持っている、と分かっていれば、ストッパーにもなるし、そこを守るために動きがあれば、こちらも現状把握がしやすくなる。
仲良くする、面倒をみる、それも、彼らにとっては全て国益、政治に絡んでいくことだ。
小さな飲み会一つとっても、それを自然と行うフィラードに、イルディンはやはり一目置いている。
彼が、もし文句無しに王位を継ぐものであったなら、その能力は称賛され、地位を確固たるものにしたことだろう。
だが、北の領主におさまった王位継承権の高い現王の異母兄、という彼の立場では、ややそれが不安要素になる。
良からぬ事を考える輩に、利用されないように。
まあ、利用される彼ではないが。
(この人材は惜しいんだよなあ。うまく政治には関わってもらいたいのだが。)
そうなれば、国がどちらに転ぶか分からなくなる。
イルディンはいつも、気が抜けない。
「ああ、そういえば、ライラスだが、あいつ、そっくりだよな。」
フィラードが何気なく言う。
「エリザにか?性格は似てないがな。」
イルディンが苦笑いすると、フィラードはにやりとしてまた言った。
「お前に、だよ。」
ドキッとして、イルディンはフィラードを見た。
まさか、とごまかすべきか。
だが、酒も入っていたからか、イルディンは否定しない。
彼らがまだ若く、エリザと知り合ってからまだ間もない頃、確かにエリザとイルディンは「そういう」関係になった。
イルディンの女性への苦手意識の根本には、間違いなくエリザとのあれこれがある。
「実はな、計算は合ってしまう。」
イルディンは、正直に白状した。
「お、素直だな。」
「・・いや、知ってただろ。」
「まあ、な。」
フィラードも苦笑いする。
「で?確かめたのか?」
わざと目を合わせずに、何でもないようにして聞いてくるフィラードに、イルディンは答えた。
「ああ。だが、返事は例のあれ、だ。」
「ああ、あれ、か。」
何度もその言葉で煙にまかれてきた二人はため息混じりにハモる。
『そんなへま、しやしないよ。』
要するに、真相がエリザから明かされることはない、ということだ。
「そろいもそろって、やられっぱなしだな。」
「間違いない。」
それでも、それぞれに守りたい相手がいて、強くなりたいと思う若者たち。彼らの未来は守らなければならない。
イルディンとフィラードは、その思いを確かめるように、小さくグラスを合わせた。




