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潜入員は、迫る。

「どういうこと?」

ソフィーはザックの説明を、もう一度求めた。

「だから、今回のことは、マドラスの一貴族の問題だってことだ。」

ある貴族の男が、のしあがるために企てた計画に、皆が巻き込まれた。調べていった結論はそこに行き着く。

「だから、なんでそうなるのよ?」

ソフィーが聞き返した時、

『港に来て。花が呼んでる!』

鈴のなる声がして、会話は中断される。

「花が?」

声に問うと、精霊が姿を現した。

耳に黒いピアス。契約精霊だ。

この国で、黒が示すのは花。ソフィーは一旦話を中断し、ザックと港に向かう。

謎の解明は、スムーズに終わらせたい。なんとなく、花も真相に近づいているのだろう。

(全く。私だけ置いてけぼり?)

どこか拗ねた気持ちで、ソフィーは港に向かった。


港には、小型の船が停まっていた。

船の前にいたのは、グランキン家に通訳としてきていた男と、顔色の悪い神官。

花たちと対峙していたが、さほど時間はたっていないようだった。


「これはこれは、聖女様。こんなところでお目にかかるとは。」

通訳のキース、という男は、建前上の一級品の礼儀正しさで花たちを迎える。しかし、その後笑顔のまま、

「セリーヌ様は、ここにいないほうがよいです。私がこの後気をそらしますからここからお立ち去りください。また迎えにきます。」

と続ける。

「何をおっしゃったのかな?」

イルディンが尋ねて、マドラス語だと分かったところで確信する。

「セリーヌ。」

花はそばにいたセリーヌにささやく。

「私が言葉が分かると言わなかったのは、キースの仕事がなくなってしまうからね?」

セリーヌは目を丸くして頷く。

「あなたの思い人は、リオンじゃなくて、キース。」

「リオンは義理の弟です。家督を継ぐため、尊大な態度も取りますが、キース様はいつも冷静で穏やかで、お慕いしていました。」

キースは多分、セリーヌの気持ちに気づいていて、あえて花に近づけたのだ。駒として使うために。

「・・セリーヌ様と、随分親しくなられたようですね。」

「ええ。・・あなたの目的はなんなの?」

ミリエルを取り戻すまでは迂闊なことはできない。

花は注意深く、キースの様子を見る。

「リオン様の命でしてね。我々の外交目的は、カムタニアと交渉する糸口を探すことと、聖女様をマドラスにお招きして浄化をしていただくこと。その目的のために動いているまでですよ。」

「・・ついでに王族に入り込んであんたがのしあがるつもりだったんだろ?」

不意に、ザックの声がした。

視線が集まると、ザックは続ける。

「一つ疑問があった。なぜ取り引き相手がグランキンだったか、だ。」

彼らは、聖女との謁見を求めていた。

それならば、グランキン伯爵は、接触すべきでない人物、ナンバーワン、である。

聖女にまつわるあれこれで、明らかに落ち目、しかも、聖女との揉め事は少し調べれば分かることだ。

事実、ザックの情報源である女性は、「落ち目の貴族は?」と聞かれ、その筆頭にグランキンを挙げたと言っていた。

「グランキンとの取り引きは、リスクがかなりあった。しかも、わざわざ落ち目の貴族を調べてまで取り引き相手に選んだことからして、自分から没落しに行っているようにしか見えない。」

しかも、取り引き内容は、合成獣だ。

しかし。落ち目の貴族を聞いてきた男の特徴を聞いて、考え方を変えると、違う絵が見えてくる。

「今回のことは、実はリオンという王族の男を陥れるために、通訳と義姉が仕組んだことなんじゃないか?」

質問した男は、キース一人。その後、グランキンのことをかなり細かく聞いてきたと言っていた。

花が後を引き取る。

「ソフィー。あなたの報告書、イルディンに読んでもらったけど、会話の内容は完璧に合成獣の取り引きだった。でも、あなたは、マドラス語は分からないのよね?だから、あの記録は通訳であるキースと、グランキンの、サリルナード語の会話。」

もし、決定的な会話の場面に花がいたら。

そこでのやり取りはものすごく辻褄の合わない、違和感だらけのものだったんじゃないだろうか。

ペットを買うつもりのリオンと、合成獣を売ろうとするグランキン。お互いかみあっているつもりでいたのだから、通訳のキースは細心の注意を払って間にたっていたはずだ。

もし、合成獣の取り引きでリオンが捕まり、跡継ぎの座を追われたら。

「セリーヌの気持ちも折り込み済みで、家を乗っとる気でいたんじゃない?そして、セリーヌは、それを知らなかった。」

「待って、花。ここまできて、セリーヌを信じるなんて、おめでたすぎるわよ?」

ソフィーは花を諌めるが、花はそれを制する。

「セリーヌは、私が言葉が分かることをリオンとキースに言わなかった。キースも、セリーヌが完璧ではないにしても、サリルナード語がある程度使えることを知ってたから、セリーヌがそれを言わなくてもあまり疑問にも思わなかったんでしょ?もし、全て二人の共謀なら、こんな情報、隠すはずはない。」

「言葉がわかる?」

キースが怪訝な顔をする。

「ああ、だから、セリーヌは逃げないわよ。あなた、迎えに来る気もあまりなかったでしょ?神官を連れ帰り、聖女の召還に成功したら、地位はあがるでしょうし、ね。」

謎解きは、終わりだ。花はミリエルを、真っ直ぐに見た。







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