表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/90

潜入員は、警告する。

試作品のチョコレートで、お茶でも、とソフィーを誘うとザックもちゃっかりついてきていた。

しばらくチョコレートを堪能。反応はまずまずの手応えだ。

しかし、セリーヌとの話を始めると、分かりやすくソフィーの顔が曇る。

花にとっては、楽しい話、だったのだが。

「・・花。あんた、もう少し危機感を持った方がいいと思うわよ。」

ソフィーは真面目な顔で言う。

「私の目からみると、そのセリーヌ、かなり意図的に花に近づいてる気がする。」

『変幻』で姿を変えていたのに、話しかけてきたこと。

しかも、余り迷いもなく。

花が、王宮の離れに住むことは、特に隠しているわけではないので、ちょっと調べれば分かる。

後をつけていたなら、迷わず「聖女様?」と声がかけられても不思議じゃない。

「でも、全然嫌な感じはなかったのよ?」

あの時間を否定したくなくて、ソフィーにも一理あるとは思いつつ、花は反論を試みる。だが・・

「ねえ、花。あなたは聖女様なのよ?政治的な利用価値も高いし、おそらく、他の聖女達から考えても、神様からも特別扱いされてる。何よりあなた自身のスキルが計り知れない。私だってうらやましいと思うことがあるわ。」

そして、自由だ。

この世界に当たり前にある、生きにくさをはねのけて進む姿は、眩しい。

「私は、あなたのこと、すごく気に入ってる。そばにいたいし、できることはしてあげたい。でもね。」

もし、カムタニアのために、花を裏切らなければならなくなったら。

花に不利になる情報を求められたら。

「・・私は花を裏切るかもしれない。」

花と過ごす、素の自分と、カムタニアの潜入員である自分。

きっと自分は、国を優先する。

それを花に告げること自体、本来あり得ない。

なんだか、いいわけをしているみたいで、気が滅入りそうになる。

そして、裏切るとき、自分は言い訳のように思うのだ。

花は恵まれている。大抵のことは、自分が心配しなくても乗り越えていくだろう。

だから、大丈夫だ、と。

「ごめん、こんな話して。要するに、あまり信じすぎちゃだめってこと。」

花は、ソフィーの言葉を心に刻んでいた。

この世界にきて、絶望的な事ばかりで、できることをみつけて前に進んできた。

友、と呼べる人ができる日が来るなんて、思いもしなかったのに。

「ソフィー。私、あなたに会えて良かった。あなたが何と言おうが、私は勝手にあなたを信じるし、あなたを友達だと思う。そんな風に心配されちゃうと、余計に好きになるわよ。」

ソフィーは、なにそれ、と言いつつもどこかて安心する。

ソフィーだって、花が相手でなければ、こんな風に自分の本心を明かしてまで心配したりはしない。

ソフィーにとっても、花は希少な友、なのだ。

「・・あー、あのさ。」

ザックがおずおずと会話に入ってくる。

花はビクッと驚いたものの、顔には出さなかったが、ソフィーは「あんた、いたっけ?」と辛辣だ。

・・いたよ。空気を読んで背景になってたけどな。

「さっきの話を聞いて、思い出したことがあってな。気になってきたから確かめに行きたい。チョコレートまたくれよ。先に行くわ。」

そういうと、ザックは手をひらひらと振って部屋から出ていった。

ソフィーも少し話をしたあと、帰り際に、そういえば、と言う。

「私がグランキン家で聞いたこと、全部まとめてイルディンさんに渡しておいたわ。リオンだっけ?マドラスの取り引き相手の尋問ももうできると思う。」

同じものは当然、カムタニアにも渡っている。何か情報があれば流してくれる、という。

花は礼をいって別れた。


その頃ザックは、ソフィーには言えない、情報入手の場にいた。いわゆる娼館である。

馴染みの娘が、最近グランキン伯爵のことを聞いてきた男がいる、と言っていたのを思い出したのだ。

その時はあまり深追いしなかったのだが。

「前に、落ち気味の貴族は?と聞かれて、グランキンの名前を出したっていってたろ。聞いてきたのはどんなやつだった?」

娘はザックにしなだれかかりながら、特徴を告げる。

改めて聞くと、その人物はちょっと腑に落ちない人物だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ