聖女は、抱きしめる。(3)
『イ・・タイ。ク・・ル・シ・・・イ。』
合成獣からはうめき声が聞こえる。
動けないまま、目からは涙がポロポロとこぼれている。
花は「無力」の意味を痛感していた。
何も、できない。
神様からもらった力を行使するべきかもわからない。
行使できない自分は、責任を負いたくない偽善者だ。
『・・主。』
いつの間にか、ポチが隣にいた。
『我々の総意だ。主に、浄化を頼みたい。』
花は、体温が下がっていく思いだった。
振り返ると、あるものは涙ぐみながら、あるものはうつむいて、運命と戦っている。
(・・私はずるい。)
神様から力を託されたことを盾に、この場を任せてもらっておいて、一番辛い判断を仲間である魔物たちにさせている。
浄化は、魔物にとって、事実上の死。
彼らは、自分達の選択を背負って生きていくのだ。愚かな人間のせいで。
その選択は、花がしなければならないことだ。
「みんな。本当にごめんなさい。これしか、今の私にはできることがない。私は私の選択で、合成獣をまるごと浄化する。見届けてください。」
花はそう告げると、合成獣に触れる。
そして、そのまま、柔らかく抱きしめた。
「助けてあげられなくてごめんね。今は神様のところに戻って、いつか、また戻っておいで。」
不甲斐なさに涙がにじむ。
その涙がポタリと落ちたとき、合成獣のうめきが消えた。
『アタ・・・タカ・イ』
光が全体を包んでいく。
そして、そのまま、合成獣は消えていった。
悲しみをみんなの心に残して。




