聖女は、抱きしめる。(1)
北の地に来るのは三度目だ。
イルディンのテレポートでふらふらしながら向かったのは、フィラードの屋敷だった。
「グランキンが合成獣を連れてくる?」
フィラードは険しい顔だ。
北の地を荒らされるのはこれで2回目だ。怒りがにじんでいる。
しかし、フィラードには、一旦我慢してもらわなければならない。
花が頼みたいのは、グランキンが「試運転」をする時の被害を最小限にくいとめること。結界を張ることができる術者がいないか聞くと、フィラードの屋敷の執事ができるということで頼む。
そして、一切を花に委ねたうえで、後処理をして欲しいと頼むと、さすがに渋られた。
切り札は、神様から与えられた浄化の力だ。
使うかどうかを神様に任された経緯を説明して、理解してもらう。
「次は森か・・。」
花はそのまま森へと向かった。
「主。待っていた。」
「あいたかったのー。」
森の入り口にはポチとリリーが迎えに出て来てくれていた。
花は、何から話すべきか迷う。
合成獣の材料に仲間がされたと知ったら、彼らはどうするのだろう。
ゴブリンの頭部。肩の辺りはコボルト。ハーピーの翼。他にも何体か使われているはずだ。
花は言葉を選びながら話していったが、合成獣の話が始まるとポチの顔が大きく歪んだ。
殺気。
当たり前だ、と思う。
もし花が家族をそんなふうに扱われたら、きっと同じ顔をする。
だが、彼らを負の連鎖に陥らせてはならない。
憎しみのままに動いても、さらなる憎しみが返ってくるだけだ。
「ならば、主はどうせよというのだ?」
苦しげにポチは呻く。
「けいやくは?」
リリーの言葉に、その手があったかと一瞬思ったが、その考えはポチに否定される。
「契約は、双方の合意によって成立する。合成獣では無理だ。」
一対一のやり取りによって成り立つ名付けの契約は不可能だということだ。
他の魔物への説明をポチに任せ、花は結界をどこにはって誘い込むか、その算段を考えていた。時間はあまりないのだ。
ポチは、自分も悔しい気持ちを抱えながらも、花の思いを代弁し、他の魔物たちの説得を頑張ってくれた。
その間、リリーは、花と一緒に森の準備を整える。
驚いたことに、木々の位置まで、リリーの力で変えることが可能だった。
一見分からないように、罠を仕掛け、そこに自然と行き着くよう、木々のレイアウトを変えていく。
リリーは時折高い場所から確認し、細かい調整をしてくれた。
どうやらグランキン達が到着したらしいとフィラードから連絡があったのは、そんなことをしながら、数日がたった時だった。




