長官は、辟易する。
イルディンにだって、限界はある。
昨夜寄せられた情報が多すぎて、いい加減嫌気がさしていた。
まず、ミリエル。
「エリザさん、グランキンと繋がっているかもしれません。」
それは、花の代わりに定食屋でのバイトをしているときのこと。
ミリエルは料理をしても問題ないため、実は花よりも重宝されていたりもするのだが。
昨日、店の裏兼エリザの住まいから、野菜などを店に運んで補充している時に、ジャガイモが転がり、その後を追ってエリザの私室に入ってしまったらしい。
引き出しから覗いていた封筒に、
「愛するエリザへ 君のグランキンより。」
と書かれてあったそうなのだ。
ミリエルは、ショックで、そのあと皿を割ったり、料理をぶちまけたり、いろいろ大変だったらしい。
次は花だ。
北の地で合成獣を試す、という話。フィラードも軽く見られたものである。
交渉相手がそれだけグランキンにとって魅力的、ということだろうか。
さらに、今日花は、名指しでグランキンに呼ばれていた。
その内容は、
「母の名は?」
というものだった。
この世界では、父と息子、母と娘が同じ名前を共有することが珍しくない。
グランキンは、「エリザ」という名に強く反応していたことになる。
さらに、花の『変幻』の姿。
髪の色、目の色は、親から子へ、強く遺伝する。
つまり、グランキンは、花があの「エリザ」の娘ではないかと考えていた。しかも。
「もしそうなら、父を知らないはずだ、と言われたの。」
その意味深さに、花はぎりぎり、
「母に、父について聞いたことはありません。」
と答えた。嘘ではない。
グランキンは、満足そうにうなずいた。
・・これはやはり、完全に花をエリザと自分の娘だと思っている節がある。
イルディンは代わりに、山賊のボスだったライラスが、自分をグランキンの息子と名乗っていることを教える。
総合すると、仮説はできるが、確証はない。
イルディンは、エリザと話をする必要があると分かっていた。
しかし、とある理由で、イルディンは、エリザがちょっと苦手である。
気が重い。
さらに花は、神様との謁見を成功させ、浄化の力を得たという。
まずは合成獣の件だ。
心苦しいが、その件は、花が適任であることは明らかだ。
イルディンは、花の「ヤバいポーション」を小分けにした瓶を片手に、また北の地へテレポートし、とんぼ返りすることとなった。
『変幻』を解いた花が、テレポートすると聞いて、ものすごく嫌な顔をしていたが、今のイルディンには知ったことではない。




