聖女は、力を得る。
あの合成獣は、きっと・・
花は気が重かった。
どうやって伝えればよいのだ。
ポチを頼ってきた、あの魔物たちに。
「ねえ、イルディン。神様と謁見したい。」
花は頼んでみる。
神様の「迷い」そのものとも言える魔物たち。
それも世界の一部として生かす世界を選択した。
その選択自体に後悔はない。だが、生かすならば花にも責任は伴う。
悪用は防がなければならない。
「謁見は、厳しい。神からの意思がなければ。」
イルディンは言う。
ならば、どうするべきか。
花は、考えあぐねていた。
「・・エリザ。」
ふいに、ソフィーから話しかけられ、花はびっくりする。
グランキン家のメイドは、基本的に私語厳禁。見つかれば叱られる。
「大丈夫。誰もいない。」
ソフィーは油断なく周りを気にしながら続ける。
「ザックから聞いた。どうやら、合成獣の試運転をするらしい。場所は、グランキンの別荘がある北。」
花は、ピクリと反応する。
北の地は、因縁の場所だ。しかも、ポチたちがいる。
「いつ?」
「5日後。今日には出発すると思うよ。」
試運転、が何を示すのか。順当に考えれば、森の魔物たちが狙われていると考えて間違いないだろう。
「ソフィーたちはどうするの?」
「ザックは研究員として一緒にいくそうよ。私は、グランキンがいない隙にこの屋敷を調べる。」
花は、今分かる情報として、領主フィラードが王兄で信用できる人物であること、森には魔物たちがいるが、花と契約しているコボルトがいることを伝える。
「コボルトと契約・・。」
唖然とするソフィー。
うーん。だいぶ慣れたな。この応対。
「私も、北にいくと思う。教えてくれてありがとう。」
花は、礼を言って、どう行動するべきか考える。
その時。
「エリザ。伯爵がお呼びよ。」
メイド長がドアをあけ、言った。
「私をですか?」
花は驚く。
「そのようよ。私も驚いたわ。」
訳を知りたそうなメイド長に見つめられながら、花は扉をノックした。
その日の夜。
花は謁見の間にいた。神様に伝えなければいけないと思ったからだ。
普通は、神から告げられなければ会話はできない。
だが、花には確信があった。
謁見の間で語りかければきっと聞いてくれる。
まあ、今起きていることをしらないわけはないと思うのだが。
謁見の間でいろいろ報告し、花は最後に伝える。
「合成獣を戻す力が欲しいのです。彼らには無事を祈ってくれる仲間がいるから。」
『花。』
球体が浮かび、声がする。
花はホッとする。が。
『あなたに、浄化の力を与えます。』
浄化の力は、神様の「迷い」から生まれた淀みと魔物を、強制的に神様に返す力。つまり、魔物を消す力だ。
前回の謁見で、あえてもらわなかったその力を、突然授けられる理由を考える。
「合成獣は、もう戻らないということですか?」
『・・残念ながら。』
ならば、神様は、花に合成獣を消せ、と言っているのだろうか?
『使い方は任せます。あなたの思うように。使わなくても構いません。』
だが、おそらく必要になるときが来る、ということだろう。
「分かりました。」
花は、今はただ、その力を受けとる。
グランキンより早く北に行き、対策をたてる必要があった。




