表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/90

長官は、心配する。

「・・まずいな。」

配られたお茶を飲み、イルディンは呟く。

お茶をいれてくれた部下の反応には気がついていない。

まずい。非常にまずい。

花が、帰って来ないのだ。

大事な聖女様を潜入捜査に送り込むという、あり得ない作戦だ。

イルディンとて、万全のバックアップを施している。

花自身も知らないが、物理攻撃も魔法攻撃も、殺傷能力のあるものは基本弾き返す結界がはってあるし、彼女に肌身放さずつけてもらっているお守りにはイルディンの魔力が込めてあり、位置情報がすぐ分かる。

だから、何があったのかだいたい推測はつくのだが。

「乗り込むには、情報が足らない。」

多分、捕まってどこかに監禁された後、少し移動して滞在、またもとの場所に戻っている。

順当に考えればグランキンだが、それにしては花に自由がありすぎる気がする。いや、でも他にだれが。

まずい。

花が、ではない。

花に手を出した誰かが、だ。

花は、自分の身を守れ、というミッションだけなら、おそらく余裕だ。

本人は五大要素の魔法がかなり上級まで使いこなせるし、闇魔法まで使える。

それに、ポチと、リリー。

あの、契約でパワーアップした魔物と精霊は、敵に回してはいけない二人だ。

花の感情を敏感に察知し、花のためなら、テレポートでどこにでも行くし、全身全霊で花を守る。

花はそこまで深く考えていなさそうだが、知能も高い、人外のものたちを従えているというのは、特異なことなのだ。

だから、正直、花は心配していない。

だから、潜入も頼めたのだが。

「命知らずは誰だ?」

イルディンは、同情をこめて呟く。


花は、次の日、グランキン家に普通に仕事にいったようだった。花が帰ってきた、という知らせを夜に聞いたときは、心底ほっとした。


「・・しかし、合成獣か。」

花の話を聞き終わったイルディンは、ふう、とため息をつく。

カムタニアの潜入員の話。マドラスの二人とグランキンの密会。

・・国際問題だ。

頭が痛い。


合成獣の研究は、10年ほど前に、倫理的な理由で禁止になった。

神から与えられた姿をそういう形でいじくるのは許されない。多くのものがそう考えたからだ。

だが。

「魔物が存在することになって、まだ日が浅い。法の整備がまだないことに目を付けたのだろう。」

もしかしたら、秘密裏に合成獣の研究は進んでいたのかもしれないが。

「・・魔物は、神様の一部だよ?そっちの方がヤバいんじゃ・・」

花が言う。

が、それは神様と謁見した聖女にしか分からないこと。まだ一般的には、魔物は突然現れるあしきもの、だ。

そして、グランキンが手をだし、外国と取り引きしようとしていることから考えて、合成獣は、軍事目的なのは間違いない。

「グランキン、もう、後には引けないところに入ってしまったな。」

まだ、法にはなっていないが、秘密裏に研究を重ね、あまつさえ、外国と取り引きするとは。予想した不正を超えている。

証拠は、ソフィーが押さえていた。

叱られたと言っていた日、魔法具をワイン瓶に仕込み、会話を録音していたのだそうだ。

取り引きの中で「合成獣(キメラ)」という言葉も、「兵器」という言葉も出てきている。通訳がいることで、言葉も明瞭。

「ただ、相手の正体が分からないから、もう少し潜入したいってソフィーが言ってたわ。」

取り引き相手が誰かは、カムタニアにとっては重要な情報なのだという。

花の潜入は、もう終わりにしたいが・・

「私も、気になってることがあるのよね。」

「エリザ」への反応。

見た目の特徴も、エリザに寄せている。

もしかしたら食堂のエリザと、何か関わりがあるのではないかというのだ。

・・イルディンの中に、ある「仮説」はあるのだが。

今はまだ、確信がない。

ともあれ、あと一週間ほどを目安に、花の潜入は続けてみることになった。


花に手を出すバカがでないことを祈りながら。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ