聖女は、鳥肌が立つ。(3)
ソフィーが唖然とするなか、花は情報を話す。
相手が信用できるか。
見極める力はまだ未熟だ。
だが、花にできるのは、いつでも直感を信じて前に進むことだけだ。
「黒髪に黒い目の聖女様のことは知ってる。『変幻』に黒の選択肢はないから、信じるしかないわね。じゃあ、エリザも偽名なんだ。グランキン伯爵、やたら反応してたけど。」
そこは、花にも不明だ。
「ソフィー。彼らはどこの国の人なの?私はまだ、この国以外の国を知らないの。カムタニアについても、初耳。」
ソフィーは今回の件に関わっていそうな世界情勢をかいつまんで説明してくれた。
この国、サルリナードから一番近い島国が、カムタニアだ。
カムタニアの財源は、豊富な鉱山資源。
基本的に中立国で、求められれば資源の売却には応じるが、自らは戦わない国。
数年前から、カムタニアは、大国マドラスに狙われている。
世界中が、それを知っているが、表向き中立を宣言しているカムタニアを侵攻することは許されない。
マドラスは、カムタニアを落とす好機を待っている状態なのだ。
「カムタニアは常に警戒しているの。今回、マドラスの貴族がこそこそ動いていることを知って、サルリナードにいた私が潜入していろいろ調べていた。」
「おい、ソフィリア、で結局連れてきたやつは・・おお?」
突然、ドアがあき、若い男がのけぞる。
「なんだ、こいつ、連れてきたときと違いすぎないか?」
「ザック。彼女は、あの、聖女様らしい。」
「・・え?」
ザック、と呼ばれた男は目を丸くする。
カムタニアの驚きの表現は似てるのかな?
「ちょっと、今後について相談してくる。待ってて。」
ソフィーは、ザックを押し出すようにして、部屋を出ていった。
数分後。
花は、二人に連れられて、隠し通路からある研究所に案内されていた。
二人がつかんでいる情報を教えると言われて。
ザックはこちらに潜入しているらしい。
眠らされて近くまできたので、場所はわからないが、王都からそれほどは離れていないらしい。
薬品の臭い。
もう真夜中のため、人は居なさそうだ。
「やつらが取引しようとしてるのは、あれだ。」
花は寒気で全身の毛が総立ちになった。
大きな入れ物に、紫の液体が満たされている。
その中に、異様な生き物がいた。
魔物なのは間違いない。だが、あちこちがちぐはぐで、違和感だらけだ。
液体のなかでも、枷がはめられ、目が開いているがうつろ。
「あれを作るまでに、試作品もいくつか作られた。あんなこと、魔物が相手だからといって、許されるものじゃない。」
ザックは小声だが、そこから伝わる感情は、怒りだ。
「あれは、何なの?」
花は、なかば予想しながら、言う。
ソフィーは低い声で答えた。
「合成獣よ。」




