聖女は、鳥肌が立つ。(1)
ワインをつぎにいき、こっそり客の正体と会話の内容を聞こう、としたのだが。
直前で、ソフィーに止められる。
「エリザ、だめだよ。あの二人の時は、ワインは外に置いてノック、じゃなきゃ。」
どうやら、以前に部屋に入ってしまい、こっぴどく叱られたらしい。
「・・ありがとう。」
残念に思いつつ、ソフィーって良い奴だなと思いながら花は引き下がる。
ただ、これは、大事な情報だ。なんとか話が聞けないだろうか。
「ソフィーは、お客様を知っているの?」
「うーん。ここ以外では見たことない。ただ、部屋に入った時は、一人はメガネをかけていて、もう一人はけっこうかっこよかった。たぶんあれは・・」
「無駄話しないで、仕事を終わらせなさい。」
メイド長に会話は阻まれる。
続きが気になるんですけど?
とりあえず最後の片付けを終わらせて、二人は仕事終了となった。
ソフィーは、仕事が終わると、長居せずにすぐ帰ってしまう。花は、一旦屋敷から出たあと、称号を検索した。
『見習いの忍び』
『甲賀忍者検定』初級。上級まで受けようと、受験前は考えていたが、雰囲気はお祭り感覚なのに、問題が難しすぎる。
上級に至っては、選択問題なしの全記述式。過去問を聞いて、もう歴史学者のレベルだったのであきらめた。ちなみに、初級は、コスプレと実技も点数になる。初級はかなりノリノリで受験し、合格の巻物をゲットしている。
ステータスから称号を発動すると、『変幻』の風が吹く感じと同じ感触があったあと、花は忍者服を着ていた。
・・コスプレ効果か。
『変幻』の髪と目は変わらない。メガネもかけており、コスプレ感満載だ。
世界観に全く合わない状況に、苦笑いする。まあ、和のイメージにするために『変幻』を解く意味もあまりないので、今は気にしないことにする。
他に何かできないかステータス画面を探してみたが、特にはない。『初級』だから仕方ないのだが。
「でも、これが忍者装束なら・・」
記憶の底から、学んだ知識を引っ張りだして、あれこれ考えていた花は、懐から忍者刀を取り出した。
日本刀のイメージからはかなり短い刀。
切る、よりも貫く、に特化したその刀は、鞘にも特性がある。
普通よりも強い素材でできている鞘は、先を取り外すことができ、筒状の忍具になる。
水のなかに潜むときの呼吸用とか。水遁の術とかでみる、あれだ。
それから・・。
花は、使用人出入口からこっそり入り、屋敷の見取り図をイメージして、応接間の隣の部屋に入ると、鞘筒を壁にあてた。
やはり忍具。思いの外クリアに聞こえてくる。
「研究は順調にいっているようだな。」
「研究は順調にいっているようですね。」
ん?これは?
「ええ。実用化ももうすぐかと。」
これは、グランキンの声だ。
「実用化も近いそうです。」
二番目の声か?
「輸送の方法は?」
「輸送の方法は?」
また、最初の順番。
「頑丈な檻は準備しています。さほど大きくないので、大型荷物の扱いでいけるかと。」
また、グランキンの声。
「檻は準備済み。大型荷物として運べるそうです。」
・・中で何が起こっているのだろう?
花は、夢中で、背中の気配に気づかない。
突然、何かを押しあてられた花は、薬品の香りと共に、意識を失った。




